1995年1月に発生した兵庫県南部地震は大きな被害をもたらしたが, 特に縦方向の地震波に対する建築構造物の強度設計の見直しが図られている.そのため,3軸方向へ加振される構造物に対する簡便な崩壊モード解析法の出現が望まれている.
個別要素法(DEM)や不連続変形法(DDA)などの手法を用いた 爆破解体解析や地震崩壊解析などの数値例は過去にも存在するが, 従来の有限要素解析コードでは,このような強非線形性・不連続性を持つ問題を解くには非常に複雑なプロセスが必要となり,崩壊にまで至る解析例は稀少である.
本研究では,微小変形・大変形,静的・動的,単調負荷・繰り返し負荷の如何に関わらず,骨組構造の有限要素解析において有効であることが立証されている 順応型 Shifted Integration 法(ASI法)をさらに改良した,ASI-Gauss法を骨組構造の地震崩壊解析に適用した.
ASI法とは,弾性要素における数値積分点は線形解析に対する最適位置 (3次はり要素の場合はガウス積分点,線形チモシェンコはり要素の場合は 中央点)に置き,全塑性断面の発生直後に,その点に正確に塑性ヒンジが形成されるように数値積分点をシフトする手法で,通常の有限要素法に比べ格段に少ない要素数で高精度の解が得られ,また従来の有限要素解析コードへのインプリメントが容易であることが大きな特長である.さらに,ASI-Gauss法とは,弾性域での精度向上を目指し,線形チモシェンコはり要素2要素を一組の部材とし,部材単位でガウス積分点位置に応力評価点が配置されるように数値積分点をシフトする手法である.特に弾性応答解に格段の改善が認められ,ASI法よりもさらに精度が向上した.
本研究で用いたアルゴリズムでは,数値積分点をシフトすることによりある要素の特定の断面に仮想ヒンジを発生させ,それと同時にその要素の断面力を解放し,破断を表現する.この操作により,部材が破断し飛散するような問題も解析が可能となる.
22層鉄骨骨組構造の地震崩壊解析を行った.地震波は神戸波1.5倍の水平2軸方向加振,モデルの1次固有周期は13[s]と20[s]である.加速度のピークである5-12 [s]の間,構造物の固有周期と地震波の周期との相違から,構造物全体が大きく揺れることはなく,1層部分で大きな変形が生じた.また部材の塑性化も下層部で多く見られた.加速度のピークが過ぎた後,下層部の柱において水平方向への漸増崩壊が進行し,最終的には26 [s]以降に上層部の重みに屈して潰れ,その落下に伴う衝撃力によって下層から順に圧壊していった.