Sediment-related Disaster Mitigation

土砂災害の軽減研究

by Takashi Matsushima, Professor of Univ. of Tsukuba

地震や豪雨による斜面や堤防の崩壊,地盤の液状化や陥没等は,土砂災害と呼ばれ,近年の地球温暖化の影響も相まって,各地でその頻度や規模が増加しています.土砂災害を未然に防ぐことが難しいのは,地盤が自然の材料であり,場所によって異なる物性を持っていること,そして災害の誘因となる地震や豪雨,地下水流れなども自然の作用で予測が難しいことが原因です.それでも,全国地盤情報データベース等の整備により,徐々に危険箇所の推定は可能となってきています.今後は,リスクの定量化とその精度向上が課題となります.

Slope failure due to Earthquake/Heavy Rain
-地震/豪雨による斜面崩壊-

斜面の危険度は,土砂災害防止法により,各都道府県が基礎調査を実施し,土砂災害危険箇所を定めて公表することになっています (国土交通省のページ.)しかし,これらの危険箇所をどのように選定するかの根拠の明確化や,定量的なリスク評価などには課題が残っています.今後の研究により,精度の向上や被災確率等の評価手法の確立が望まれています.

2018年北海道胆振東部地震による斜面崩壊箇所(Slope failure at Atsuma-cho, Hokkaido Iburi east earthquake in 2018)

2021年静岡県熱海市の泥流災害の再現解析(Simulation of Atami mudflow in 2021).解析の詳細はこちら

Seismic Liquefaction
-地震による液状化-

地震による地盤の液状化現象は,1964年の新潟地震で注目され,多くの検討がなされてきました.現在では,高層建物基礎の設計でも液状化を起こさない深い地層まで杭を打つなどの対策が標準化されています.ただし,2011年の東日本大震災では,多くの戸建住宅が液状化被害を受けました.そのため,既存戸建住宅の基礎の補強工事の方法も多く提案されていますが,まだ工事費が高価であることが導入の妨げになっています.
また,液状化した地盤が,重力の作用で一方向に流動する現象は,建物を支える杭を破壊するなどの被害をもたらします.1995年の阪神大震災で多くの被害が出たのち,多くの構造設計指針が見直されましたが,その流動抵抗の算定方法に関しては検討の余地が残されています.
近年は,地盤の年代効果(時間と共に地盤が固くなる効果)と液状化被害の関係についても注目されています.


台湾集集地震(1999)で液状化により傾いた建物

液状化は,実験室で簡単に再現することができる.砂を水中でゆるづめに堆積させ,その後,水を抜くと,地盤表面に建物模型(金属の直方体)を置くことができる.そこに繰返し振動を加えると,地盤は液状化し,建物模型は地面に沈んでしまう.

個別要素法と呼ばれる解析手法で示した,液状化のメカニズム.繰返しのせん断を加えると,粒子間の接触力(赤線)が徐々に失われていき,最終的には全ての粒子同士の接触点が失われ,液状化する.ただし,そのまま一方向にせん断を加え続けると,あるところで接触点が回復する(剛性回復と呼ばれる).