森田研究室では「工学分野に起因する解きにくい問題」を対象として、数値解法・並列解析システムに関する研究を遂行します。
我々の身の回りには、固体の変形、流体の流れ、熱など様々な現象が満ちあふれています。これらの現象は、我々が数理として取り扱えるよう様々なモデル化が施され、支配方程式という形で記述されます。支配方程式の解を得ることができれば、私達は現象を理解し予測することができます。一方、その多くは微分方程式で記述されており、解析的に解ける例はほとんどありません。そこで支配方程式を計算機上で表現できるよう離散化して数値的に解を得る手段、つまり数値解析の出番となります。
解析対象の支配方程式を離散化すると、以下のように、しばしば解きにくい問題に直面します。
これらの問題は汎用的な解法・解析システムが利用できない場合が多く、それゆえ非常に興味深い研究対象となります。 本研究室では、解析対象となる学問領域の深い知識・専門性と数値解法・並列計算技術を組み合わせた解決を目指します。
本研究室での研究生活を通して、機械工学・計算工学・応用数理学などの対象分野、解析システム・並列計算などのソフトウェア技術、スーパーコンピュータ・コンピュータクラスタなどのハードウェアの専門知識・専門技術の獲得とともに、 「仮説検証能力」「計算機・IT を駆使した問題解決能力」「情報伝達・プレゼンテーション能力」を基礎とする「問題の提示・解決・伝達能力」を鍛えます。
これらは専門分野を問わず思考と理解の基盤であり、専門知識を有する自律した個人として、社会を牽引するための重要な能力と考えています。 研究テーマは研究室から提示・個々の意向を勘案しながら設定し、打合せや学会発表・論文投稿をマイルストーンに研究進捗を図ります。
複雑な物理現象を詳細に解像する大規模な数値シミュレーションは、必要な計算量・メモリ使用量が膨大になります。
標準的な計算機を利用すると「現実的でない計算時間を要する」「メモリ容量が不足し計算できない」などの状況が生じます。
この解決を目的として、スーパーコンピュータなど専用計算機を利用した並列計算技術により解決を目指し、その基盤となるソフトウェアを開発しています。
数値シミュレーションを並列計算する場合、一般に計算データを空間的に分割する、領域分割法を基にした手順が採用されます。 有限要素法など特定の計算手法に特化した並列シミュレータが開発されている状況に対し、数値計算に利用する情報を統一的に扱うデータ構造としてグラフデータを採用し、 並列計算に関する機能・コードをコンポーネント化(ライブラリ化)することで、 数値計算手法によらない領域分割型並列化の統一的なライブラリを開発します。 主な機能としてデータ分割パーティショナ、並列線形ソルバを提供しています。