世界貿易センタービルの飛行機衝突解析


WTCの崩壊要因とリダンダンシーについて, 2008年度日本建築学会大会(中国)構造部門(応用力学)パネルディスカッション「建築構造設計における冗長性と頑強性の役割」資料, (2008), pp.39-46.


スプリングバック説: WTC崩壊要因の新説について


「スプリングバックで崩壊 9.11世界貿易センタービルでシミュレーション」,常陽新聞記事,2007.10.16.


「背骨」砕け,ビル崩壊 筑波大准教授が新説,朝日新聞朝刊記事,2007.9.12.


WTCの崩壊要因究明を目指した航空機衝突シミュレーション,日本計算工学会会誌「計算工学」特集記事,Vol.12,No.2,2007.4.



 2001年9月の米国同時多発テロに伴うニューヨーク世界貿易センタービル(WTC)の崩壊は,世界中を震撼させた.WTC1, 2ともに飛行機の衝突によりコア柱や周辺の架構が切断されて応力再配分が起こり,その後発生した大規模な火災により残存する架構の耐力が失われ,床中央部が陥没し,最終的にいわゆる進行性崩壊を招いたとされている.しかしその一方で,飛行機が衝突した際に,瞬間的に発生した衝撃力が床スラブの結合部を損傷し,構造物を進行性崩壊に早く至らしめた可能性があるという説,さらには,ビルの崩壊時間を決定したのは衝突の際の衝撃であって,火災ではないという説もある.このように様々な憶測が飛び交い,現存する資料は映像と生存者の証言のみという状況の中で,WTCの崩壊を技術的・科学的な側面から解明するためには,数値シミュレーションに期待されるところが大きい.
 今日までに様々なソフトウェアによって検証のための解析が実施され,様々な報告がなされている.例えば福田らによる研究では,飛行機の衝突過程,その後のビルの応力再配分状況などがLS-DYNAによって解析され,検討が行われている.また,Quanらによる研究では,AUTODYNによってWTC1への航空機の衝突から全体崩壊までの解析を一貫して行っている.正確な情報に基づく検討を実施すれば,崩壊原因の究明につながるものと期待されている.
 本研究では,飛行機の衝突,その後の火災発生から崩壊までの過程を連続的に解析することを最終目標とし,計算コストを最小限に抑えた有限要素解析システムを構築した.解法には,骨組構造体の衝突崩壊問題に対して有効な手法として開発されたASI-Gauss法を適用し,これをニューヨーク世界貿易センタービル2号棟(WTC2)の動的解析に適用した.ASI-Gauss法は,部材の性状に合わせて要素内の数値積分点を順応的にシフトすることで,計算コストを低く抑えることが可能な順応型Shifted Integration法(ASI法)をさらに改良した手法である.ASI-Gauss法では,2つの線形チモシェンコはり要素をサブセット要素として考え,そのガウス積分点に相当する位置に応力評価点を配するように数値積分点をシフトすることで,弾性変位解の精度を向上させている.また,積分点のシフトと同時に断面力を解放することで破断を表現し,幾何学的な位置関係に基づいて要素間をギャップ要素で拘束することで接触を表現可能としている.可能な限り実情報に基づいてモデル化されたWTC2に対し,ボーイング767-200ER型航空機が衝突した際の挙動を解析した.



WTC2の飛行機衝突解析(全体図)

機体とエンジンの挙動(上面図)

WTC2,飛行機共に線形チモシェンコはり要素でモデル化した.WTC2全体では要素数604780,節点数435117,自由度数2608980である.飛行機は要素数4322,節点数2970,自由度数17820である.モデル化にあたり,米国FEMAの調査報告書を参考に部材の断面定数と材料定数を設定した.衝撃波がコア柱内を伝播していく様子や,応力再配分が動的に起こっている様子など,局所モデルで行った場合よりもさらに詳細な情報が得られた.また被害状況についても,局所解析結果より良好に観測結果と一致した.

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関連文献(Books):

磯部大吾郎: 建築構造設計における冗長性とロバスト性, 日本建築学会応用力学シリーズ12, ISBN:978-4-8189-0611-2, pp. 84-98, 2013.

関連文献(Journals):

都井 裕, 磯部大吾郎: 骨組構造の有限要素崩壊解析における順応型 Shifted Integration 法, 日本造船学会論文集, 第171号, (1992), pp.363-371. abstract

Y.Toi and D.Isobe: Adaptively Shifted Integration Technique for Finite Element Collapse Analysis of Framed Structures, International Journal for Numerical Methods in Engineering, Vol.36, (1993), pp.2323-2339. abstract

都井 裕, 磯部大吾郎: 順応型 Shifted Integraion 法による骨組構造の座屈崩壊挙動の有限要素解析, 日本造船学会論文集, 第174号, (1993), pp.469-477. abstract

都井 裕, 磯部大吾郎: 順応型 Shifted Integration 法による骨組構造の動的崩壊挙動の有限要素解析, 日本造船学会論文集, 第175号, (1994), pp.299-306. abstract

Y.Toi and D.Isobe: Finite Element Analysis of Quasi-Static and Dynamic Collapse Behaviors of Framed Structures by the Adaptively Shifted Integration Technique, Computers and Structures, Vol.58, No.5, (1996), pp.947-955. abstract

磯部大吾郎, 都井 裕: 順応型 Shifted Integration 法による脆性骨組構造体の動的崩壊挙動の有限要素解析, 日本造船学会論文集, 第180号, (1996), pp.471-478. abstract

D.Isobe and Y.Toi: Analysis of Structurally Discontinuous Reinforced Concrete Building Frames Using the ASI Technique, Computers and Structures, Vol.76, No.4, (2000), pp.471-481. abstract

磯部大吾郎, チョウ ミョウ リン: 飛行機の衝突に伴う骨組鋼構造の崩壊解析, 日本建築学会構造系論文集, 第579号, (2004), pp.39-46. abstract

磯部大吾郎, チョウ ミョウ リン: ASI-Gauss法による世界貿易センタービルの飛行機衝突解析, 日本建築学会構造系論文集, 第600号, (2006), pp.83-88. abstract

K.M. Lynn and D. Isobe: Finite Element Code for Impact Collapse Problems of Framed Structures, International Journal for Numerical Methods in Engineering, Vol.69, No.12, (2007), pp.2538-2563. abstract

K.M. Lynn and D. Isobe: Structural Collapse Analysis of Framed Structures under Impact Loads using ASI-Gauss Finite Element Method, International Journal of Impact Engineering, Vol.34, No.9, (2007), pp.1500-1516. abstract

D. Isobe, L. T. T. Thanh and Z. Sasaki: Numerical Simulations on the Collapse Behaviors of High-Rise Towers, International Journal of Protective Structures, Vol. 3, No. 1, (2012), pp.1-19. abstract

関連文献(Proceedings):

チョウミョウリン,磯部大吾郎: ASI-Gauss有限要素法を用いた骨組構造体の衝突崩壊解析, 日本建築学会2003年度大会(東海)学術講演梗概集B-1, (2003), pp.333-334. abstract

磯部大吾郎, チョウ ミョウ リン: 衝突荷重下における骨組構造体の崩壊解析, 日本機械学会第16回計算力学講演会講演論文集, No.03-26, (2003), pp.823-824. abstract

K.M. Lynn and D.Isobe: Structural Collapse Analysis of Framed Structures under Impact Loads Using ASI-Gauss Finite Element Method, Proceedings on 1st International Conference on Design and Analysis of Protective Structures against Impact/Impulsive/ShockLoads, (2003), pp.371-387, Tokyo, Japan. abstract

磯部大吾郎,チョウ ミョウ リン: ASI-Gauss有限要素法における破断・接触アルゴリズムの検討, 計算工学講演会論文集, 第9巻, 第1号, (2004), pp.359-362. abstract

D.Isobe and K.M. Lynn: A Finite Element Code for Structural Collapse Analyses of Framed Structures under Impact Loads, CD-ROM Proceedings on 4th European Congress on Computational Methods in Applied Sciences and Engineering ECCOMAS 2004, (2004), Jyvaskyla, Finland. abstract

磯部大吾郎,チョウミョウリン: ASI-Gauss衝突崩壊解析手法の破断・接触表現について, 日本建築学会2004年度大会(北海道)学術講演梗概集B-1, (2004), pp.345-346. abstract

磯部大吾郎,チョウ ミョウ リン: ニューヨーク世界貿易センタービル2号棟の飛行機衝突解析, 計算工学講演会論文集, 第10巻, 第2号, (2005), pp.571-574. abstract

磯部大吾郎,チョウミョウリン: ASI-Gauss法を用いた世界貿易センタービルの飛行機衝突解析, 日本建築学会2005年度大会(近畿)学術講演梗概集B-1, (2005), pp.327-328. abstract

D.Isobe and K.M.Lynn: Aircraft Impact Analysis of New York World Trade Center Tower by Using the ASI-Gauss Technique, CD-ROM Proceedings of the International Conference on Computational and Experimental Engineering and Sciences 2005 (ICCES'05) -Advances in Computational and Experimental Engineering and Sciences-, (2005), pp.1212-1217, Chennai, India. abstract

D.Isobe, Z. Sasaki and K.M.Lynn: Full Model Analysis of Aircraft Impact Event at World Trade Center Using ASI-Gauss Technique, Abstracts of the 7th World Congress on Computational Mechanics, (2006), Los Angeles, USA. abstract

佐々木嗣音,磯部大吾郎: 全体モデルによるWTC2の飛行機衝突解析, 日本建築学会2006年度大会(関東)学術講演梗概集B-1, (2006), pp.269-270. abstract

佐々木嗣音,磯部大吾郎: 飛行機衝突時における高層建築物の動的挙動解析, 日本機械学会第19回計算力学講演会講演論文集, No.06-9, (2006), pp.249-250. abstract

磯部大吾郎,佐々木嗣音: WTCの崩壊要因究明を目指した航空機衝突シミュレーション, 計算工学講演会論文集, 第12巻, 第1号, (2007), pp.399-400. abstract

D. Isobe and Z. Sasaki: Aircraft Impact Analyses of the World Trade Center Towers, CD-ROM Proceedings of the 1st International Workshop on Performance, Protection, and Strengthening of Structures under Extreme Loading (PROTECT2007), (2007), Whistler, Canada. abstract

磯部大吾郎: 航空機衝突時のWTCビルの動的挙動について, 日本建築学会2007年度大会(九州)学術講演梗概集B-1, (2007), pp.253-254. abstract

D. Isobe and Z. Sasaki: Aircraft Impact Simulation of the WTC tower for Investigation on True Cause of the Total Collapse, Proceedings of the 2nd Korea-Japan Workshop on Computational Engineering, (2007), pp.293-302, Seoul, Korea. abstract

磯部大吾郎: ASI-Gauss法を用いた動的崩壊解析手法によるWTCの崩壊要因究明, 第57回理論応用力学講演会NCTAM2008講演論文集, (2008), pp.247-248. abstract

久永 哲也,磯部大吾郎: ASI-Gauss法を用いた衝突崩壊解析コードにおける破断・接触アルゴリズムの検討, 日本建築学会2008年度大会(中国)学術講演梗概集B-1, (2008), pp.391-392. abstract

D. Isobe: Numerical Simulations for Investigation on True Cause of the Total Collapse of the WTC Towers, Proceedings of International Symposium on Structures under Earthquake, Impact, and Blast Loading 2008 (IB'08), (2008), pp. 157-164, Osaka, Japan. abstract

久永 哲也,磯部大吾郎: 衝突崩壊解析における接触アルゴリズムの検証, 日本機械学会第21回計算力学講演会講演論文集CD-ROM, No.08-33, (2008), pp.59-60. abstract

久永 哲也,磯部大吾郎: 世界貿易センタービルのリダンダンシーに関する数値解析的研究,日本機械学会第22回計算力学講演会講演論文集CD-ROM, No.09-21, (2009), pp.149-150. abstract

D. Isobe:An adaptive finite element code for impact and collapse analyses of buildings, Abstracts of the 2nd International Workshops on Advances in Computational Mechanics (IWACOM-II), (2010), Yokohama, Japan. abstract

恩田 江理,久永 哲也磯部大吾郎: WTCのリダンダンシーに関する検証解析, 計算工学講演会論文集, 第15巻, 第2号, (2010), pp.1007-1010. abstract

D. Isobe: A Collapse Analysis Code and Its Recent Applications, Abstracts of the 1st Spain - Japan Workshop on Computational Mechanics, (2012), Barcelona, Spain.abstract

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