吊り天井の地震時脱落挙動シミュレーションのV&Vと数値解析例

V&V and Numerical Examples of Suspended Ceiling Collapse Simulation under Seismic Excitation

Abstract


一般的に普及している吊り天井の構成部材は,接合金具と呼ばれる爪を引っ掛けたりするだけの簡易的な金物で接合されているため,地震動や強風などの大きな外乱を受けた際,接合金具が外れることで部材が分離し,天井材が脱落する可能性がある.実際,1995年の兵庫県南部地震以降,大規模な地震災害が発生するたび,吊り天井が脱落し床に散乱するという被害事例が多数報告されている.さらに,報告された事例は,体育館や空港,駅,オフィスビルといった大空間を有する施設で発生したケースがほとんどである.このような大空間施設は,災害時に避難拠点としての機能を要求されるため,天井の脱落・散乱を防ぎ,施設の健全性を維持することが重要となる.吊り天井の脱落メカニズムを検討するために,2014年に防災科学技術研究所が所有する実大三次元震動破壊実験施設(以下,E-ディフェンス)において,吊り天井が取り付けられた学校体育館の実大スケール試験体を用いた振動台実験が実施された.当該実験によって,典型的な学校体育館における天井脱落現象の力学的なメカニズムに関して有用な知見が得られた.ところが,実際の施設に取り付けられている吊り天井は,施設の規模や用途などによって様々な仕様を有する.天井面の形状が異なるだけでも,地震動を受けて天井脱落が生じるまでのプロセスも変化することが予想される.さらには,天井重量や接合金具の種類などによっても脱落性状は変化し得る.したがって,吊り天井の仕様を様々変更しながら繰り返し調査する必要があるが,その度に上述の振動台実験のような大規模な実験を行うには莫大な費用が要求される.そのため,実験的手法の代替として,数値解析による吊り天井脱落挙動のシミュレーション技術を開発し,多様な状況下における天井脱落メカニズムを検証する必要がある.以上を踏まえ,本研究では梁要素を組み込んだ高精度かつ高効率な有限要素法であるASI-Gauss法に対して,部材間接触アルゴリズム,接合金具の脱落アルゴリズム,支持点加振アルゴリズムを導入することで天井脱落挙動解析技術を開発する.その上で,上述のE-ディフェンスによる天井崩落実験の再現解析を通してV&Vを実施する.また,開発した天井脱落挙動解析技術を用いて,技術基準で規定された吊り天井に対する耐震対策の有効性検討を実施する.さらに,音響施設に取り付けられた複雑形状を有する吊り天井の地震時挙動解析を実施し,その脱落メカニズムについて検証する.


In this study, a numerical code that can simulate ceiling collapse phenomena in wide-area facility under seismic excitation was developed. The ASI-Gauss technique was applied for the numerical code. A numerical model of a suspended ceiling was validated by the reproduction analysis of the experiment conducted at the E-Defense. In addition, numerical analyses on the behaviors of earthquake-resistant ceilings in the gymnasium and suspended ceiling in a concert hall were conducted using the code.


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