音響施設における吊り天井の地震時脱落挙動と耐震化方法に関する数値解析的研究

Numerical Research on Ceiling Collapse Mechanisms and Earthquake-Resistant Measures in Acoustic Facility

Abstract


東北地方太平洋沖地震や熊本地震などの巨大地震動に伴って,体育館やホールなどの大スパンを有する建造物において吊り天井が脱落する被害が相次いで報告されている.吊り天井の脱落防止対策を確立するために,実大三次元震動破壊実験施設(以下,E-ディフェンス)にて天井脱落被害再現実験[3]が実施されたり,先行研究において天井脱落挙動の解析技術が開発されたりするなど,吊り天井の脱落メカニズム解明に向けた研究が進められてきている.しかし,これまでの吊り天井脱落に関する実験的・解析的研究は,いずれも体育館や商業施設に設けられるような鋼製下地在来工法吊り天井と呼ばれる規格化された吊り天井が対象であった.一方,ホールや劇場などの音響性能が要求される施設では,施設内の反響性を向上させるために天井や壁などの内装に凹凸を持たせたり,遮音性を確保するために高密度の内装材を用いたりするケースが多い.このような規格に沿わない仕様を持つ吊り天井は,地震時に特異な脱落挙動を示すことが予想されるため,個別の検討が必要となる.そこで本研究は,上述のような規格に沿わない吊り天井の一例として,シューボックス型のコンサートホールに広く用いられる,天井面に箱型の段差が設けられた吊り天井(以下,箱型段差吊り天井)を対象に地震時における脱落挙動を調査し,得られた知見に基づいた適切な耐震化対策の提案を目的とする.具体的には,実在の箱型段差吊り天井が取り付けられたコンサートホールを参考に解析モデルを構築し,先行研究で天井の崩落解析に対して有効性が示されたASI-Gauss法を用いて,地震時における構造躯体の応答および天井の脱落挙動を有限要素解析する.その後,解析により得られた天井の脱落傾向を踏まえ,斜め部材の設置による耐震対策を施したモデルを構築し,同様の解析を行うことで耐震性能を評価する.


In this research, a collapse analysis of a concert hall’s box-type suspended ceiling containing level gaps was performed. A numerical model of the concert hall and ceiling was simulated by applying a seismic wave. The detachment of clips was caused by the propagation of the impact force that was generated when the suspended ceiling collided with the wall. Furthermore, the results showed that the locations of the clips detached by the collisions were strongly affected by the geometrical shape of the ceiling. This phenomenon was also confirmed in the numerical results of the model installed with earthquake-resistant measures.


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