ロボット機構内の衝撃力予測システムの開発


 多くのロボットは,その機能性・生産性を向上させるために高速動作を行うことが望まれる.その一方で,動作の高速化に伴う内力の増大や接触時の衝撃力により,モータやギアなどが破損する危険性が高まる.また,ロボットは使用目的に応じて様々な機構を持ち,動作時の姿勢変化によりその構造的強度が時々刻々と変化する.すなわち,ロボット機構が外力を受ける場合,部材破損の可能性がある部位は機構,姿勢,動作によって変化し,動作時に生じる応力集中や衝撃波の伝播などにより,時には予期せぬ箇所に破損が発生してしまう可能性がある.このような危険を避けるため,機構を構成する部材内を伝播する衝撃力の検出および緩和は大変重要な課題となる.
 通常,ロボットはセンサにより衝撃力を検出し,その値より機構の強度的危険性を判定するが,センサの取付け部のみでしかそれが実施できないという欠点がある.また,衝撃計測の分野では加速度センサを用いる場合が一般的であるが,加速度と衝撃力との関係は構成部材により異なるため,加速度情報をそのまま危険性の判定に適用することはできない.力センサを用いる方法もあるが,その動荷重に対する校正法はJIS規格などでは確立されておらず,計測値の信頼性は低い.動荷重を厳密に計測するためには,衝突物体の運動量変化を厳密に計測できる装置が必要となる.さらに,センサやアンプには応答周期などの計測限界が存在するため,計測不能な高周波の衝撃力が発生している可能性もある.以上のことを踏まえると,現在のセンサに頼ったロボットでは,動作の高速化に対する限界が生じてしまうことが考えられる.そこで本研究では,自らの機構の数値モデルを持ち合わせ,他物体との接触時には,センサに頼ることなく,短時間の有限要素解析により衝撃力を予測するロボットシステムの概念を提案する.
 本研究では,衝撃波を低計算コストで把握可能なシステムを開発し,実験との比較・検証により,ロボット機構の衝撃力予測システムの構築に向けた検討を行う.機構部材のモデル化には,次元と自由度数の少ない線形チモシェンコはり要素を用い,時間積分の安定化と計算の低コスト化を図った.線形チモシェンコはり要素は変位関数として線形内挿関数を用いるため精度が低いが,2要素を1つのサブセット要素として扱い,その応力評価点をBernoulli-Eulerの仮定に基づく3次はり要素の数値積分点に相当する位置に配置することにより,最小要素数で精度の高い弾性変位解を得ることが可能である.また,一般に有限要素では各節点に質量が配分されるため,拘束点では要素の質量が無視されてしまうが,サブセット要素の重心節点に質量を集中させることで問題の解決を図った.他物体との接触の考慮には,ギャップ要素を用いた手法を適用した.これらの手法を用い,接触を含むロボット機構の内力分布解析アルゴリズムを構築し,実験との比較により衝撃力解析の妥当性を検証した.さらに,可変剛性部材を用いた脚機構の歩行動作時における衝撃力解析に適用した.



リンク機構の衝撃実験概要



実機の概要



計測された荷重の履歴曲線

ギャップ要素を用いた手法は被接触物体の剛性を考慮した解析が可能であり,かつ剛体に近い被接触物体の表現も可能であることが確認できた.また,実験値との比較を行った結果,衝撃力のピーク値については妥当な解を算出できることが確認できた.



変形の様子(×500)       リンク先端荷重の履歴曲線
跳ね返りを考慮した衝撃力予測解析
(動画はダウンロードに少々時間がかかります)



ロボット脚機構の衝撃力予測解析

ロボット脚機構の衝撃力解析を行った結果,可変剛性部材として想定したMRFダンパが衝撃力緩和に有効であることを確認した.さらに,部材剛性を変化させることで脚が負担する荷重が増減すること,MRFダンパの取付け位置によっては逆に衝撃力のピーク値の増大を招くことも明らかになった.

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関連文献(Journals):

D.Isobe and Y.Moriya: A Finite Element Scheme for Impact Force Prediction of Robotic Mechanisms, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol.18, No.3, (2006), pp.340-346. abstract

関連文献(Proceedings):

小澤 一裕,磯部大吾郎: 有限要素法による能動変形機構の衝撃緩和解析, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'01講演論文集CD-ROM, No.01-4, (2001). abstract

磯部大吾郎,小澤 一裕: 有限要素法によるロボット機構の歩行動作における衝撃力の予測, 第7回ロボティクスシンポジア予稿集, (2002), pp.197-202. abstract

廣田 直也,磯部大吾郎: 有限要素法を用いたロボット機構内の衝撃力予測, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'02講演論文集CD-ROM, No.02-6, (2002). abstract

守屋 良昭,廣田 直也,磯部大吾郎: 有限要素法を用いたマニピュレータの衝撃解析, 第21回日本ロボット学会学術講演会論文集CD-ROM, (2003). abstract

磯部大吾郎,廣田 直也,守屋 良昭,山根 直樹: 計算力学的手法によるマニピュレータ内の衝撃力予測, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'04講演論文集CD-ROM, No.04-4, (2004). abstract

磯部大吾郎,廣田 直也: 数値モデルによるマニピュレータ内の衝撃力予測, 日本機械学会2004年度年次大会講演論文集Vol.1, No.04-1, (2004), pp.1-2. abstract

守屋 良昭,磯部大吾郎: 数値モデルによるリンク機構内の衝撃力同定, 第22回日本ロボット学会学術講演会論文集CD-ROM, (2004). abstract

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