勉強と研究 似て非なるもの

 勉強と研究は,似ているようでその実は全く異なるものです.勉強は「既にわかっていることを勉強する」ことで,一方,研究は「まだわかっていないことを研究する」ことです.このことは何を意味するかというと,勉強ができない,嫌いだからと言って研究者になる道を諦める必要はなく,逆に,勉強ができるからと言って優秀な研究者になれるとは限らない,ということです.

 まあこれも当たり前と言えば当たり前のことで,何を今更という感じもしますが,勉強と研究は似ているようで実は全く違うものです.大学院時代や大学に就職してからも時々「へー,勉強が好きなんですね.」と言われますが,はっきり言って私は勉強が好きではありませんし,得意でもありません(^^;.それは今でもそうです.実際,今の仕事を選んだわけにも書いているように私は学生時代は決して優等生ではありませんでしたし,いわゆる受験にはことごとく失敗しています.一応東大卒ではありますが,浪人してやっと入れてもらった(^^;と思っているので,どこか一歩下がっていわゆる東大生や東大卒を見ているような変なところが今でもあります.大学に入る前も入った後も「勉強ができる」という点に関しては,自分より優れた人はいくらでもいました.でもまあ「勉強ができる」というのは,能力というよりは,「勉強する」かどうかなので,単に「やる気」の問題かもしれませんね.

 しかし,そういう状況は大学4年の時,研究室に入って「研究」というものに直接接したとき一変することになります.私は大学の先生になりたいとずっと子供の頃から思っていて,でもそれにはとても勉強ができないといけない,と思っていたので正直ちょっと自信がありませんでした.東大に入ったくらいで大学の先生になれるほど最先端の学問は甘いものではありません.実際,官僚になることも考えていて,国家公務員上級職(今の国家I種)の情報を集めたりして,勉強や受験申し込みもしていました.しかし,研究室に入って研究がどういうものかがおぼろげながらわかると勉強と研究は全然違うことがわかり,勉強ができなくても研究者にはなれる(もちろんある程度はできないと話にならないですが(^^;),自分も勉強は(さほど)できないが,研究者にはなれる,と思いました.なんで「自分は研究者になれる」と思ったのかは,実はよくわかりませんが,まあ一種の思いこみでしょうか?(^^;研究というものに興味をもち,どうしても研究者になりたい,と思えば,「なれる」と思いこめるような気がします.実際,今なんとか食べて行けているのでその判断は正しかったのでしょう.

 勉強と研究の違いは一言で言えば,勉強は「既にわかっていることを勉強する」ことで,一方,研究は「まだわかっていないことを研究する」ことです.なんか日本語だけ見ると全然説明になってませんが(^^;,でもまさにそういうことです.どっちが難しいかと言えば,そりゃあわかっていることを勉強することより,わかっていないことを研究することに決まってますが,人にはやはり向き不向きがあります.勉強が得意な人もいるでしょうし,研究が得意な人もいるでしょう.私は勉強はあまり得意ではなかったが,研究は(結果的に(^^;)得意だったということかもしれません.

 実際,この世界に入ってから,東大などの一流大学出身の優秀な研究者が多いのは確かにそうですが(と書いてみてまた気がついたのですが,やはりここでも自分は除外して考えてしまっています(^^;),一流大学以外の大学を卒業した優秀な研究者をたくさん見てきました.ですから,たとえ勉強ができなくても,嫌いでも(^^;,自分は研究者になるんだ,という強い意志があれば,なれる可能性は大いにあると思います

 研究で何が大変かと言えば,研究テーマを決めることだと思います.研究の善し悪しは,はっきり言って何を研究するかを決めたときにその大勢が決まっているとも言えます.そういう研究テーマを思いつけるかどうかが分かれ目だと思います.工学の場合は,社会のために役立つかどうかということも考慮しなければなりません.研究テーマを思いつけなければ商売あがったりで,そういう意味ではとてもシビアと言えますが(実際,私もこれから数年は食べていくだけの研究テーマはありますが,それから先はわかりません(^^;),大学の先生はなってしまえばなかなかクビにはならないので,それもどうかとは思います.

 でも,よく考えてみれば,「勉強ができる」ということだけで食べて行ける分野はありませんよね.例えば,「勉強ができて」東大に受かったとしても,卒業後,国家I種や司法試験に受かって,官僚や弁護士になったりしても,それから先は,「勉強ができる」だけでは何ともなりません.結局は,「研究ができる」とかなんとかいうことではなく,単に「仕事ができる」かどうか,ということかもしれません.

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