隣接建築物の棟間距離に関する設計支援に向けた棟間衝突解析

Seismic Pounding Analysis for Design Guideline on Clearance between Adjacent Buildings

Abstract


 1985年のメキシコ地震では,震源から400km離れたメキシコシティにおいて,3棟が隣立した集合住宅が棟間衝突を起こし倒壊した.この原因としては,3棟のうち1棟の固有周期が過去の地震被害により変化し,異なる揺れ方をしたためと考えられている.また,高さの異なる建築物の場合も固有周期の差異により異なる揺れ方をするため,棟間距離が短い建築物同士では棟間衝突が起こる恐れがある.ここで問題となる棟間距離の算出方法について,笠井らは隣接建築物の位相差を考慮できるという利点を持つSPD法(Spectral Difference Method)を提案している.この方法では,対象とする隣接建築物および想定する地震波の情報から棟間距離を算出するため,設定する条件により棟間距離が種々に変化してしまう.そこで,本研究では算出の煩雑さを軽減するため,建築物単体の情報により一意に決まる弾性限界の変位量,塑性限界の変位量という2つの指標を提案し棟間距離を算出する.この方法では,隣接建築物の位相差は考慮できなくなるが,建築物が決まれば想定する地震波によらず棟間距離を一意に決定することができる利点がある.本研究では,高さの異なる2種類の鋼構造建築物に上記の棟間距離を設定し,ASI-Gauss法を用いた棟間衝突解析を行った.そして,解析後に各モデルの全柱・梁の要素数に対する塑性化した要素数の割合を求め,これを塑性化率とし棟間距離や入力地震波の大きさの違いによる損傷度合の変化を考察した.


PDF file