津波漂流物の衝突解析による津波避難ビルの安全性評価
Abstract
2011年の東北地方太平洋沖地震では地震，津波および漂流物の衝突によって多くの建物が損壊した．その中でも漂流物の衝突を含む津波による建物の被害としては倒壊，転倒あるいは滑動が数多く起こったと考えられている．今回の震災を受けて，これらの被害が起こらない構造上安全性の高い津波避難ビルの必要性が高まった．現在でも，高台が近くに存在しない海岸地域では多くの自治体で津波避難ビルの設置が検討されている．また，関係機関では津波避難ビル等の構造上の要件に係わる暫定指針を提案し，さらにその指針に基づいて津波避難ビルの具体的な設計例を示した．津波避難ビルの設置に向けて様々な自治体や機関で多角的な検討を行っているが，依然として課題が多く存在していると考えられている．例えば，津波の被害を受ける建物に対して地震の影響を定量的に評価することは困難である点，漂流物の衝突力の統一的な評価方法が確立されていない点などが挙げられる．これらの問題点を解決することで，より構造上安全性の高い津波避難ビルの設置を検討することができるものと思われる．本稿では建物の倒壊被害に着眼し，地震力，流体力および漂流物の衝突力を連続的に建物に作用させ，数値解析によって津波避難ビルの基礎的な安全性評価を行った．なお，解析コードには衝突解析や崩壊解析に実績のあるASI-Gauss法を用いた．