有限要素法による圧電アクチュエータ制御に関する一考察
A Study on Piezoelectric Actuator Control by using Finite Element Method

Abstract


 ロボットは主に機構部、駆動部、コントローラ部、インターフェース部、 センサ部の5つの部分に分けることができる。この内後者の3つは 最近のコンピュータの目覚ましい発展の恩恵を受け、計算速度・応答速度 が素晴らしく向上している。その反面、前者の機構部、駆動部については 機械的な応答速度が限界に近づいているため、ロボットシステム全体の 律速段階となってしまっている。 「頭でっかちで手足の反応が鈍い」既存ロボ ットに対し、システムのIQは決して高くはないが、物の 掴み方、歩き方などを一度覚えると条件反射的にすばや く実行できるようになる反射神経の優れたロボットを作 るには、言わば一つ一つの筋肉組織が反射的に 変形し全体としてまとまった動きを取る、より生体的な システムを構築する必要がある。
 そこで、反射神経の優れる次世代ロボットのシステム概念として、 以下のようなものを提案する。 機構部および駆動部としては機械的反応速度の速いバイモルフ型 圧電アクチュエータを使用し、全身を圧電アクチュエータで組織する。 例えば空間内の任意の位置へロボットの先端を移動する 場合、個々のアクチュエータから系全体の状態までを把握した 制御システムにより、個々のアクチュエータの必要 変位量および必要電圧をリアルタイムに計算し、即座にエネルギー源に 電圧を供給させることによって動作を実行する。 すなわち、個々のアクチュエータが人間で言う筋肉細胞、集中管理制御 システムが脊髄の反射神経に該当することになる。 また、全身を圧電アクチュエータで組織することにより、障害物にぶつかったり 物を掴んだりする際のセンサとしても利用することができる。
 従来の制御システムは、系の形状およびリンクされた部材の数量などによって 微妙に状態方程式を変更する必要がある。これに対し、系全体の状態を 剛性方程式で表現することができ、部材の欠如や不良などに対しても 剛性マトリックスを操作することで 柔軟に対応できる有限要素法を、制御法として利用するメリットは大きい。
 本報告では、本ロボットの制御手法として有限要素法を使用することを提案し、 圧電アクチュエータの必要電圧を計算するための逆解析理論を展開する。 また、材料の圧電性を考慮して定式化した平面ひずみ三角形要素を用い、 2本のアクチュエータを連結させた モデルの制御について考察する。


In this paper, a new concept of robotic control methodology is proposed. By using Finite Element Method as controlling method, it is possible to capture global information of the whole system such as lack or disability of constituting members of the robot. The robot is entirely made up of bimorph piezoelectric actuator, which is useful by its high response capabilities. An inverse problem theory to calculate required electric volts to obtain target displacements is also proposed in this paper, and is applied to the control analysis of connected actuators. As a result, the possibility of controlling piezoelectric actuators by a newly proposed methodology has been confirmed.