世界貿易センタービルのリダンダンシーに関する数値解析的研究
A Numerical Research on Redundancy of the World Trade Center Towers

Abstract


2001年9月11日、テロによってニューヨーク世界貿易センター(WTC)ビルが完全崩壊したことは、人々に衝撃を与えた。その際に崩壊したWTC2は、飛行機衝突から崩壊までに1時間弱を要した。米国政府調査局であるFEMAとNISTがまとめた報告書によると、風荷重に対する補強システムとして設置されたアウトリガートラスシステムが応力伝達経路を確保することとなり、リダンダンシーが生まれ、崩壊までの時間を稼ぐのに有効であった可能性を示唆している。
 本研究の目標は、衝突から崩壊までの一連の事象を検証することである。現在、飛行機の衝突時におけるアウトリガートラスシステムの作用や全体挙動に与える影響を検証するため、WTC全体モデルの飛行機衝突解析を行っている。その後、衝突解析で得られる破壊されたモデルに火災を発生させることで、アウトリガートラスシステムの効果を検証することが可能となる。解析にはASI-Gauss法を用いる。本手法は、骨組構造物の衝突崩壊解析を行う場合に有効な手法の1つであり、通常の有限要素法に比べ格段に少ない要素数で、高精度の収束解が得られる順応型Shifted Integration (ASI法)[4]を改良し、弾性解の精度を向上させたものである。
 本稿では、風荷重の載荷による静的解析を行い、風荷重下におけるアウトリガートラスシステムの効果を検証する。


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