建物の耐震強度が火災崩落挙動に与える影響
Influence of Earthquakeproof Structural Strength on Fire-Induced Collapse Behavior of Buildings

Abstract


世界貿易センタービル(WTC)において進行性崩壊を引き起こした主な要因は、火災による影響であるとNISTの報告書に記されている。構造用鋼材は火災加熱を受けると溶解まで至らなくても、部材温度の上昇に伴い粘性が増加して融点よりも比較的低い温度と応力度で部材の変形を誘発する。事例としてWTCビル群の一つであり火災のみで進行性崩壊を引き起こしたとされるWTC7がある。対照的に、スペインのウィンザービルは全焼したにも関わらず一部で層崩壊しただけで進行性崩壊には至らなかった。これら二つの構造物の挙動には、その構造的強度の差異が大きく影響したと考えられる。本稿では、この二つの事例を比較・検証するために、耐震強度の一般的指標であるベースシア係数を考慮し、その相違がもたらす火災発生時の構造物の挙動を比較した。解析には、最小限の計算コストで解析可能なASI-Gaussを使用した。温度上昇における部材の弾性係数・降伏応力の低下曲線は、NISTの報告書から引用した。部材破断アルゴリズムにおいて部材の軸ひずみと回転角の臨界値を設定することで破断を表現した。これらを用いて103スパン骨組構造の火災崩落解析を実施し、異なるベースシア係数を設定することで構造的強度の差異を作り出し比較検討を行った。


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