ASI-Gauss法による鉄骨構造の動的地震崩壊解析(その1) −動的地震崩壊解析コードの開発(定式化を中心に)−

Abstract


数値震動台の整備については、旧科学技術庁の諮問機関への第24号答申、「地震防災研究基盤の効果的な整備のあり方について」(平成9年9月3日)にその必要性が述べられている。すなわち、都市部の地震災害は社会的影響が大きく「地震に強い国土・社会を創ること」が必須であること、そのため中核目標として「地震災害時空間シミュレーションシステム」の開発が必要であり、とりわけ数値震動台の開発が重要であることが強調されている。
 地震時における構造崩壊過程の物理現象解明には、実大3次元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)による実験が必要である。数値震動台の開発では、地震時崩壊過程の物理現象を厳密に追跡することが必要であり、実大3次元震動破壊実験結果に基づく数理モデルを基礎として構築されるべきである。数値震動台の最終形態は、統合的な各種数理モデル体系となることが想定されており、従来型マクロモデルから超精密超大規模のミクロモデル、およびミクロ・マクロモデルによるマルチスケールモデルなどがその構成要素となる。
 マクロモデルは、3次元固体力学問題を1次元力学特性のみに縮約した梁理論、同じく、2次元に縮約したシェル理論に見られるような、ある方向の応力や歪み成分を無視することで数学的に簡略化した力学モデルと言える。また、広義には柱梁接合部を含む部分架構を1つの要素とするような、いわば簡易型計算モデルも含むものであるが、数学的簡略化のため適用範囲に制限があるものの、構造の全体崩壊挙動を予測するには有効な手段である。そのため、災害予測の高度化、効率化、高速化を実現するためのマクロモデル解析の高精度化は、地震減災費用低減技術開発の面からも重要である。
 そこで、本論文では、マクロモデルとして梁要素を用いた鉄骨構造の動的崩壊解析アルゴリズムについて述べる。ここでは、計算における時間増分を大きく出来ることから陰的時間積分法を採用し、幾何学非線形は更新ラグランジェにより考慮した。塑性崩壊解析を効率よく行えることから、都井が開発したASI法を基に、磯部が改良、発展させたASI-Gauss法を使用する。


PDF file