建物の火災崩落挙動について
On Fire-induced Collapse Behavior of Buildings

Abstract


 9.11 米国テロ事件でWTC7ビルは火災により進行性崩壊が引き起こされたとされている。一方、2005 年にマドリッドのWindsor ビルで起きた大火災においては、ビルが全焼したにも関わらず骨組みだけ残存し全体崩壊には至らなかった。これらの相違を生み出した要因を調べる必要がある。そこで本研究では、建物の火災崩落現象を解析するためのシステムを開発した。火災という長時間の現象を動的に解析するには長い計算時間を要するため、最小限の計算コストで解析可能なASI-Gauss 法を適用した。また、準静的領域と動的領域を両立して解くため、部材の急速な変形の有無によって時間増分を変化させる制御アルゴリズムを導入した。さらに、柱同士が接触する際には軸剛性のみを持つヒンジ要素を形成させ、実現象に即した崩落挙動の再現を試みた。また、部材破断、要素間接触および温度上昇における部材の耐力低下曲線を導入した。さらに、温度上昇に伴う部材の膨張は構造物の強度に多大な影響を及ぼすため、熱ひずみを加えて熱膨張を考慮した。これらを用いて10 層2 スパン骨組構造の火災崩落解析を実施し、火災が生じた階層や床範囲などの火災初期条件に対する崩壊モードの相違を調べた。なお、解析では部材の座屈を考慮し、柱部材中央に10 mm の初期不整を加えた。


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