構造力学の復習

科目名:鋼構造学(2020年度版)第01
作成日:20200917日()
更新日:20210610日()
作成者:山本亨輔(筑波大学・システム情報系・助教)


 本講の目的は,「鋼構造を設計できる能力」を獲得することです.実は,鋼構造の挙動は,非常によく構造力学的です.そこで,先ず,構造力学の復習から,本講を始めて行きたいと思います.


目次

1. 応力・ひずみ・フックの法則
 1.1 力の定義
 1.2 外力と内力
 1.3 応力の定義
 1.4 ひずみの定義
 1.5 フックの法則
2. 梁の曲げ
 2.1 梁の内力
 2.2 平面保持仮定
 2.3 曲げ応力
 2.4 たわみの算出


1. 応力・ひずみ・フックの法則


 多くの大学・高専で「弾性体の微小変形理論」は材料力学・構造力学として学びます.材料力学は機械工学分野,構造力学は土木工学分野でよく用いられる名称で,学習範囲はほとんど同じですが,試験における出題傾向には分野の特色が多少現れるように感じます.これらの科目と,高校までの力学との大きな違いは,対象物が質点系ではなく,形状を持つ弾性体1(elastic body)となっていることです.ここでは,この弾性体の解説を行います.


1.1 力の定義

 物体に(Force)が働く時,物体の運動が変化することを見出したニュートン(Isaac Newton)は運動方程式としてこの関係を数式で表しました.運動の変化とは,速度の変化のことで,物体の加速度に相当します.運動方程式は次式で表されます. \begin{equation} m\textcolor{#0070C0}{\Vec{a}}=\textcolor{#FF0000}{\Vec{F}} \end{equation} ここで,力:\(\textcolor{#FF0000}{\Vec{F}}\),加速度:\(\textcolor{#0070C0}{\Vec{a}}\)はベクトルです.質点系の力学では,たとえば,次のような問題を最初に考えます.

例題1
図1のように,質量\(m\)の質点が剛性\(k\)のバネで水平に固定されている.水平方向に荷重\(\textcolor{#FF0000}{f}\)を加えた時,生じる伸び\(\textcolor{#0070C0}{x}\)を求めよ.




図の表示:

図1 バネ質点系の伸び

この問題では,荷重\(\textcolor{#FF0000}{f}\)という力が与えられて,変形量である伸び\(\textcolor{#0070C0}{x}\)が生じていることがわかります.伸びが生じると,バネによって復元力\(k\textcolor{#0070C0}{x}\)が反対の方向に作用します(図2-2).伸び\(\textcolor{#0070C0}{x}\)は時刻\(t\)の関数になっていて,運動方程式は次のように与えられます. \begin{equation} m\ddot{\textcolor{#0070C0}{x}}=\textcolor{#FF0000}{f}-k\textcolor{#0070C0}{x} \end{equation} ここで,\(\ddot{\textcolor{#0070C0}{x}}\)は伸び\(\textcolor{#0070C0}{x}\)の時間二階微分(\(=\ddif{\textcolor{#0070C0}{x}}{t}=\dif{\textcolor{#0070C0}{v}}{t}=\textcolor{#0070C0}{a}\))を表しています.今,質点系が静的つりあい状態(static state of equillibrium),つまり\(\ddot{\textcolor{#0070C0}{x}}=0\)の時,運動方程式は次式のようなつりあい方程式(equation of equillibrium)となります. \begin{equation} \textcolor{#FF0000}{f}-k\textcolor{#0070C0}{x}=0 \end{equation} この式では荷重という力と復元力という力を合わせるとゼロになっていて,運動に変化が生じていないことを示します.ところで,力を「運動の変化」とすると,このつりあい式において,力の役割をうまく説明することができません.そこで,次のように考えることにします.

(Force)は,物体の運動や形状の変化である.

このように考えると,先程の運動方程式は, \begin{equation} m\ddot{\textcolor{#0070C0}{x}}+k\textcolor{#0070C0}{x}=\textcolor{#FF0000}{f} \end{equation} と書けます.この式は「(\(\textcolor{#FF0000}{f}\))は,運動変化(\(m\ddot{\textcolor{#0070C0}{x}}\))と形状変化(\(k\textcolor{#0070C0}{x}\))」という意味になっていて,一般的な運動方程式と定義の整合性が取れます.構造力学では,力をこの運動変化・形状変化という定義2で扱います.

 今回の問題では荷重(load)という言葉が出てきました.そこで,荷重がどのような力であるかも,例題と整合するように考えます.例題では,荷重\(\textcolor{#FF0000}{f}\)は何によって生じたかが示されていません.しかし,通常,力は作用・反作用の法則といって,「AがBに力\(\Vec{F}\)を作用させる時,BはAに同じ大きさで向きが逆の力(\(-\Vec{F}\))を作用させる」という関係にありますので,この力\(\textcolor{#FF0000}{f}\)を質点に生じさている物体には反対方向へ同じ大きさの力\(\textcolor{#FF0000}{f}\)が作用しているはずなのです.ただ,それが質点を右へ引っ張る手なのか磁石なのか糸で引いているのかは今回の例題では問題としていません.ただ,問題中で与えられた(givenな)ものとなっています.このことから,荷重は「外的要因によって生じる力」と定義できることがわかります.

 このような荷重の定義を用いると,もしかして「内的要因によって生じる力」というのも存在するかもしれないと考えます.そこで,これを反力(Reaction Force)の定義3とします.内的要因とは,対象系に含まれる構成要素のことで,今回の例題では質点系に接続されたバネがそうです.バネは質点系の構成要素であり,バネによって質点系には復元力\(k\textcolor{#0070C0}{x}\)が生じますので,これは内的要因によって生じた力だから反力である,と言えます.多くの問題で反力は与えられておらず(unknown),自力で求めなければなりません.


1.2 外力と内力

 構造力学では,弾性体の変形を求めます.弾性体とは,荷重によって形状が変化し,力を取り除くこと(除荷)で元の形状に戻る物体のことを言います.この「元に戻る性質」のことを弾性(elasticity)と言います.弾性体は質点系と異なり,形状があります.そのため,変形量を求めるには全体系と局所系に分けて考える必要があります.

 全体系(global system)とは考えている物体全体のことを指します.形状を持つ物体の運動方程式には,並進の運動方程式回転の運動方程式があります.式は次のように表されます. \begin{eqnarray} m\ddot{\textcolor{#0070C0}{\Vec{x}}}_{\textcolor{#0070C0}{G}}=\Vec{F} \\ I\ddot{\textcolor{#0070C0}{\Vec{\theta}}}_{\textcolor{#0070C0}{G}}=\Vec{T} \end{eqnarray} ここで,\(m\):質量,\(\textcolor{#0070C0}{\Vec{x}}_{\textcolor{#0070C0}{G}}\):重心の変位,\(\Vec{F}\):全体系に働く力,\(I\):慣性モーメント,\(\textcolor{#0070C0}{\Vec{\theta}}_{\textcolor{#0070C0}{G}}\):重心における回転角,\(\Vec{T}\):トルク(腕\(\times\)力,つまり,力のモーメントのこと)を表しています.静的つりあい状態では,\(\textcolor{#0070C0}{\Vec{x}}_{\textcolor{#0070C0}{G}}=0\),\(\textcolor{#0070C0}{\Vec{\theta}}_{\textcolor{#0070C0}{G}}=0\)なので,代入すると \begin{eqnarray} \Vec{F}=\Vec{0} \\ \Vec{T}=\Vec{0} \end{eqnarray} を得ます.これらはそれぞれ,つりあい式力のモーメントのつりあい式と呼ばれます.

 さて,ここで全体系に働く力を,特に,外力(external force)ということにします.外力は一般に「外から働く力」と言われますが,これは「全体系に働く力」と同じ意味になります.先に出てきた荷重と反力は外力の一種と考えます.

 ここで,荷重が既知の外力(図2-1),反力が未知の外力(図2-2)であるということを強調しておきたいと思います.というのも,全体系表面で矢印の描かれていない場所は,「外力が作用しているかどうか分からない」のではなく,「外力はゼロと分かっている」ことを示しているからです.この事は,次に局所系を考える時に必要になる前提条件となります.




図の表示:

図2 全体系と局所系

 次に,全体系を仮想的に切断し,部分を取り出すこと(図2-3)を考えます.この時の部分のことを局所系(local system)と言います.外力と区別するため,局所系に働く力内力(internal force)と言うことにします.局所系に全体系と共通の表面が含まれている時,その表面には元・外力が作用します(図2-4).全体系が静的つりあい状態にある時,局所系も静的つりあい状態4になければなりませんが,元・外力だけを考えている状態では,明らかにつりあっていません.つまり,図が完成していない事がわかります.局所系が静的つりあい状態にあるために,帳尻合わせの力を想定できるのは切断面(cross section)だけです.この切断面に働く力断面力(cross-sectional force)とい,一般的には内力とは断面力のことを言います.

 断面力は切断面に連続的に分布します.そこで,単位面積当たりの内力を考える必要があり,これを特に応力(stress)と言います.応力と圧力を混同してしまう人は,応力が内力の一種であるのに対して,圧力は外力であると考えれば区別できるのではないかと思います.まとめると,以下の通りになります.


1.3 応力の定義

 構造力学で最初の例題はおそらく,次のような問題になるはずです.ここでは,この問題を解きながら,応力,変形(ひずみ),フックの法則といった構造力学の基本を学びます.

例題2
長さ:\(l\),断面積\(A\),ヤング率\(E\)の均質な棒材がある.その両端に引張荷重\(\textcolor{#FF0000}{P}\)を作用させた.この時,棒材の伸び\(\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}\)を求めよ.




図3 棒材の引張問題

 最初に全体系の力のつりあい式を求めます.全体系の力のつりあい式は,以下のようになります. \begin{equation} \textcolor{#FF0000}{P}-\textcolor{#FF0000}{P}=0 \end{equation} 右辺のゼロは慣性項(\(ma\)の部分)を表しています.この式自体は,伸び\(\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}\)を求めるのに直接的な貢献をしませんが,未知の外力が存在しないことを確認する意味があります.当然ですが,全体系の力のつりあい式に現れる力は,全て外力です.

 次に,全体系(参考:図1-1)の軸直角方向へ切断面を取り,局所系\(a\)と\(b\)(図4-2)を作ります.局所系には,元・外力\(\textcolor{#FF0000}{P}\)がそれぞれ働きます(図4-3)が,このままでは静的つりあい状態にはなりません.そこで,切断面に生じる断面力を考える必要があります.断面力は\(\textcolor{#0070C0}{N}\)とおきます.2つの内力は互いに作用・反作用の関係にあることがわかります(図4-4).なお,\(\textcolor{#0070C0}{N}\)のような軸方向の内力を軸力と言います.




図の表示:

図4 局所系と内力

 局所系の力のつりあい式は,局所系\(a\),\(b\)それぞれで求めることができます.局所系\(a\)の力のつりあい式は, \begin{equation} \textcolor{#FF0000}{P}=\textcolor{#0070C0}{N} \end{equation} のようになります.本来は,力のつりあい式なので「\(\textcolor{#FF0000}{P}-\textcolor{#0070C0}{N}=0\)」等のようにすべきですが,計算ミスをしやすいため,敢えて式を「上面の内力の和(引張:正)=下面の内力の和(引張:正)」という形で記述します.同様に,局所系\(b\)の力のつりあい式は, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{N}=\textcolor{#FF0000}{P} \end{equation} と書きます.局所系の力のつりあい式の両辺を断面積\(A\)で割って,応力,すなわち,単位面積当たりの内力を求めます. \begin{eqnarray} \sigma_a=\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{A}=\frac{\textcolor{#0070C0}{N}}{A} \\ \sigma_b=\frac{\textcolor{#0070C0}{N}}{A}=\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{A} \end{eqnarray} これが応力の定義式となります.


1.4 ひずみの定義

 長さが「単位長さ」(=1)の局所系を図5のように取り出すことを考えます.この局所系は元の長さが1で伸びが\(\textcolor{#0070C0}{\varepsilon}\)であるとします.このような局所系を軸方向に\(l\)個並べると,全体系と長さが一致するはずなので,長さの関係式は, \begin{equation} l+\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}=l\times\left(1+\textcolor{#0070C0}{\varepsilon}\right) \end{equation} と書けます.この時,\(\textcolor{#0070C0}{\varepsilon}\)をひずみ(strain)と言って,定義式は以下のようになります. \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{\varepsilon}=\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}}{l} \end{equation} ひずみは,「元の長さに対する変形量の比」と定義される変形(deformation)の物理量です.変形量という言葉が,伸び(elongation)やたわみ(deflection)を表すのに対して,変形はその無次元量として区別されます.




図5 局所系の変形


1.5 フックの法則

 図6に,局所系に働く内力と伸びを示します.局所系\(a\)は,軸力が\(\textcolor{#FF0000}{P}=\textcolor{#0070C0}{N}\),元の長さ\(a\),伸び\(\textcolor{#0070C0}{\varDelta a}\)となっています.一方,局所系\(b\)は,軸力が\(\textcolor{#0070C0}{N}=\textcolor{#FF0000}{P}\),元の長さ\(b\),伸び\(\textcolor{#0070C0}{\varDelta b}\)です.応力は単位面積当たりの内力なので,それぞれの局所系で\(\sigma_a=\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{A}=\frac{\textcolor{#0070C0}{N}}{A}\),\(\sigma_b=\frac{\textcolor{#0070C0}{N}}{A}=\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{A}\)と求められます(図6-2).ひずみは,\(\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta a}}{a}\),\(\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta b}}{b}\)ですが,棒材は均質であり,局所系の長さをどのように取っても同じ変形が生じていると考えられますので,式(15)より,\(\varepsilon_a=\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta a}}{a}=\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}}{l}\),\(\varepsilon_b=\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta b}}{b}=\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}}{l}\)となります(図6-3).局所系に生じる応力と変形が求められたので,後は応力と変形の関係式を求めれば,変形量を求めることができます.




図の表示:

図6 局所系に働く応力・変形とその関係

 応力とひずみの関係は,材料によって異なります.そこで,何らかのモデルを導入する必要があるのですが,最も一般的な関係式がフックの法則(Hooke's law)として知られています.これは,「応力とひずみは比例する」(\(\sigma=E\varepsilon\))という仮定で,線形性と弾性を同時に示します.なお,変形が十分に微小であれば,フックの法則はどんな材料でも必ず成り立つと期待できます.局所系\(a\),\(b\)にフックの法則を適用すると, \begin{eqnarray} \sigma_a=E\varepsilon_a \\ \sigma_b=E\varepsilon_b \\ \end{eqnarray} が得られます(図6-4).

 応力の定義式,変形の定義式をフックの法則に代入すると, \begin{equation} \frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{A}=\frac{\textcolor{#0070C0}{N}}{A}=\sigma_a=E\varepsilon_a=E\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta a}}{a}=E\frac{\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}}{l} \end{equation} という関係式が得られます.与えられた記号\(\textcolor{#FF0000}{P}\),\(E\),\(A\),\(l\)を用いて,\(\textcolor{#0070C0}{\varDelta l}\)を求めたかったのですから,例題の答えは, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{\varDelta l}=\frac{\textcolor{#FF0000}{P} l}{EA} \end{equation} と求められます.



2. 梁の曲げ


 図7のように断面に引張と圧縮が同時に作用する変形を曲げ(bending)と言います.また,曲げに抵抗する部材のことを(はり,beam)といいます.曲げによって生じる変形量はたわみ(deflection)と言います.個人的に,大学専門科目としての材料力学・構造力学において,60点(単位認定)の最低基準は,「単純梁のたわみを求めることができること」だと思います.なぜなら,梁のたわみを求めるプロセスに,構造力学で学ぶべき項目の大半(外力・内力の概念や平面保持仮定など)が含まれているためです.ここでは,先ず,梁に働く内力を解説し,続けて,たわみを求めます.




図7 梁と曲げ


2.1 梁の内力

 梁の例題として,以下の問題を解きながら,梁の全体系・局所系の力のつりあいと変形について学びます.

例題3
長さ\(L\),ヤング率\(E\),断面二次モーメント\(I\)の均質な単純梁がある.図8のように集中荷重\(\textcolor{#FF0000}{P}\)が作用する時,点\(\mathrm{C}\)におけるたわみ\(\textcolor{#0070C0}{\delta_{\mathrm{C}}}\)を求めよ.




図8 単純梁の例題

 この梁は点\(\mathrm{A}\),点\(\mathrm{B}\)でピン支点により支えられています.このような梁を単純梁と言います.ピン支点とは,床や台に固定された丸棒の上に,梁を設置するような構造です.点\(\mathrm{B}\)は,ローラー・ピン支点と言って,水平方向に動くことができます.

 先ず,全体系の力のつりあい式を求めて,未知外力を確認しましょう.点\(\mathrm{A}\)には反力\(\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}\),\(\textcolor{#0070C0}{H_{\mathrm{A}}}\)が,点\(\mathrm{B}\)には反力\(\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{B}}}\)が作用します.ですので,鉛直方向の力のつりあい式は, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}+\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{B}}}-\textcolor{#FF0000}{P}=0 \end{equation} となります.また,水平方向の力のつりあい式は, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{H_{\mathrm{A}}}=0 \end{equation} です.静的つりあい状態にある時,どの点を回転中心としても力のモーメントの和はゼロになります.そこで,点\(\mathrm{C}\)を中心として力のモーメントのつりあい式を求めると, \begin{equation} -\frac{L}{2}\times\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}+\frac{L}{2}\times\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{B}}}=0 \end{equation} となります.式(20)と式(22)を連立方程式とみなして解くと, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}=\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{B}}}=\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{2} \end{equation} を得ます.以上で,全体系に働くすべての力,つまり,全ての外力を求めたことになります.なお,このように全体系の力のつりあい式のみを用いて,未知の反力が全て求められる構造のことを静定構造(statically determinate structure)と言います.よって,この梁も静定単純梁(statically determinate simple beam)と言われることがあります.

 さて,梁の\(x\)軸の適当な位置に切断面を設けて,局所系を取り出し,力のつりあい式を考えます.図9のように先ず\(0 \leq x \leq c\)の場合を考えます.この時,元・外力は\(\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}\)だけです.全体系が静的つりあい状態にあるので,局所系も静的つりあい状態にあるはずですが,内力として新たに導入できるのは断面力だけです.よって,図9-2のように,切断面に沿った方向に\(\textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)の断面力が作用しています.この断面力\(\textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)をせん断力(shear force)と言います.すると,力のつりあい式は, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}-\textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}=0 \end{equation} と書けます.但し,このままで局所系は回転を始めてしまいますので,静的つりあい条件が満たされるように,力のモーメントのつりあい式も考える必要があります.力のモーメントをつりあわせる事ができるのは,断面力だけなので,切断面に力のモーメント\(\textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)が図9-3のように反時計回りに作用します.この断面力\(\textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)は,曲げモーメント(bending moment)と言います.切断面位置を回転中心として,力のモーメントのつりあいを考えると, \begin{equation} x\times\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}-\textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}=0 \end{equation} となります.




図の表示:

図9 局所系に働く内力

 せん断力\(\textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)と曲げモーメント\(\textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)は,切断面位置\(x\)の関数で表されます.ここで,\(\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}=\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{2}\)なので, \begin{eqnarray} \textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}&=&\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{2} \\ \textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}&=&\frac{\textcolor{#FF0000}{P}x}{2} \end{eqnarray} となります.

 次に,図10のように\(c \leq x \leq L\)の場合を考えます.基本は図9の場合と同じですが,荷重\(\textcolor{#FF0000}{P}\)が加わります.局所系の力のつりあい式は, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}-\textcolor{#FF0000}{P}-\textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}=0 \end{equation} となり,力のモーメントのつりあい式は, \begin{equation} -x\times\textcolor{#0070C0}{R_{\mathrm{A}}}+\left(x-c\right)\times\textcolor{#FF0000}{P}+\textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}=0 \end{equation} となります.但し,\(c=\frac{L}{2}\)です.




図の表示:

図10 局所系に働く内力

 同様に,せん断力\(\textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)と曲げモーメント\(\textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)を,切断面位置\(x\)の関数で表すと, \begin{eqnarray} \textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}&=&-\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{2} \\ \textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}&=&\frac{\textcolor{#FF0000}{P}\left(L-x\right)}{2} \end{eqnarray} となります.まとめると, \begin{eqnarray} \textcolor{#0070C0}{V\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}&=& \left\{\begin{array}{ll} \frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{2} & \left(0 \leq x \leq \frac{L}{2} \right)\\ -\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{2}& \left(\frac{L}{2} \leq x \leq L \right) \end{array}\right.\\ \textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}&=& \left\{\begin{array}{ll} \frac{\textcolor{#FF0000}{P}x}{2} & \left(0 \leq x \leq \frac{L}{2} \right)\\ \frac{\textcolor{#FF0000}{P}\left(L-x\right)}{2}& \left(\frac{L}{2} \leq x \leq L \right) \end{array}\right. \end{eqnarray} となります.なお,断面力は,\(x=\frac{L}{2}\)の時のように,値を2つ持つことがあります.


2.2 平面保持仮定

 荷重とたわみの関係式を求めるに当たって,簡単のため,平面保持仮定(Euler-Bernoulli theorem)を導入します.この仮定は「変形前に中立軸に対して直交していた断面は,変形後も直交性を維持する」という仮定になります(図11).




図の表示:

図11 梁の平面保持仮定

 ここでは平面保持仮定を幾何学的な数式で表すことを目指します.図12に示す梁に対して任意の鉛直方向変位(図12-2)を考えます.これをたわみ(deflection)と言います.局所系として位置\(x\)から\(x+\varDelta x\)までの範囲(図12-3)を考え,図12-4のように,位置\(x\)におけるたわみを\(\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)とします.その傾きは\(\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)を\(x\)で微分したものですので,\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)(\(=\dif{\textcolor{#0070C0}{v}}{x}\))と書けます(図12-5).\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)をたわみ角(deflection angle)と言います.位置\(x+\varDelta x\)でも同様にして,たわみ\(\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}\),たわみ角\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}\)が得られます(図12-6).




図の表示:

図12 梁の鉛直方向変形量

 局所系を拡大した図を図12-7に示します.平面保持仮定がありますので,変形後も切断面と中立軸は直交性を維持します.拡大した図中にたわみ角\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)を書き入れる(図12-8)と,直角との関係から図12-9に示した角度も\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)であることが分かります.同様に,たわみ角\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}\)も書き入れる(図12-10)と,図12-11に示した角度も\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}\)であることが分かります.この2つの角度の関係を延長線上で合わせます.図12-12に\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)の同位角を,図12-13に\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}\)の同位角を示します.すると,2つの切断面が作る延長線の交点の角度は\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}-\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)であることが分かります.このたわみ角の変化を曲率(carvature)と言います.




図の表示:

図13 梁の局所系の変形

 この局所系を台形(図13)と考えて,軸方向の伸縮\(\textcolor{#0070C0}{u\left(\textcolor{#000000}{x,y}\right)}\)を求めます.鉛直方向へ中立軸高さがゼロとなるように\(y\)軸を取ると,変形後の\(x\)軸方向の伸縮\(\textcolor{#0070C0}{u\left(\textcolor{#000000}{x,y}\right)}\)は, \begin{eqnarray} \textcolor{#0070C0}{u\left(\textcolor{#000000}{x,y}\right)}&=&-\left(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}-\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\right)y \nonumber \\ &=&-\textcolor{#0070C0}{\varDelta \theta}y \end{eqnarray} と求められます(図13-3).元の長さは\(\varDelta x\)ですので,軸方向ひずみは \begin{equation} \varepsilon=-\frac{\textcolor{#0070C0}{u\left(\textcolor{#000000}{x,y}\right)}}{\varDelta x}=-\frac{\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}-\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}}{\varDelta x}y \end{equation} と求められます.\(\varDelta x\)を非常に小さく(ほぼゼロ)とすれば,微分の定義式4より \begin{equation} \varepsilon=-\lim_{\varDelta x \rightarrow 0}{\frac{\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}-\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}}{\varDelta x}}y=-\dif{\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}}{x}=-\textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}y \end{equation} となります.平面保持仮定はこの\(\varepsilon=-\textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}y\)を意味します.


2.3 曲げ応力

 軸方向ひずみ\(\varepsilon\)は,フックの法則(\(\sigma=E\varepsilon\))より,次式のような軸方向の応力分布を表します. \begin{equation} \sigma = E\varepsilon = -E \textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}y \end{equation} この応力分布を曲げ応力(bending stress)と言います.中立軸高さ\(y=0\)を回転中心として,曲げ応力が生じるモーメントを切断面全体で合計したものが,曲げモーメントとなります.切断面全体の合計とは,面積分を用いて表すことができますので, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{M}=-\int_{S}{\sigma y \diff A} \end{equation} となります.ここで,\(y\)軸が上向き:正ですので,\(\sigma y\)の正の方向は,梁の上側の引張応力による時計回りの方向となるのですが,曲げモーメントは反時計回りに定義していますので,この正負の逆転を合わせるためにマイナスが付きます.さて,式(38)に式(37)を代入すると, \begin{eqnarray} \textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}&=&-\int_{S}{\sigma y \diff A}=\int_{S}{E \textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}y^2 \diff A}\\ &=&E \textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\int_{S}{y^2 \diff A}\\&=&EI\textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)} \end{eqnarray} が得られます.ここで,\(I=\int_{S}{y^2 \diff A}\)は,断面二次モーメント(inertia moment)と呼ばれ,材料特性(ヤング率など)に影響されない幾何量です.言い換えると,断面二次モーメントは,面積や体積,長さ等の図形の形だけから定まる量の仲間であるということになります.構造設計とはこの断面二次モーメント\(I\)や他に断面積\(A\)等を調整して,荷重に耐えられる構造寸法を決定するプロセスと言えます.


2.4 たわみの算出

 ここで得られた\(\textcolor{#0070C0}{M}=EI\textcolor{#0070C0}{\phi}\)は,平面保持仮定(\(\varepsilon=\textcolor{#0070C0}{-\phi} y\))とフックの法則(\(\sigma=E\varepsilon\))という2つの仮定から導かれる関係式で,これによって,梁の内力と鉛直方向変位\(\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)を関連付けることができました.式(33)のように曲げモーメント\(\textcolor{#0070C0}{M\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)は\(x\)の式で与えられていますので,これをそのまま関係式に代入すると, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}= \left\{\begin{array}{ll} \frac{\textcolor{#FF0000}{P}x}{2EI} & \left(0 \leq x \leq \frac{L}{2} \right)\\ \frac{\textcolor{#FF0000}{P}\left(L-x\right)}{2EI}& \left(\frac{L}{2} \leq x \leq L \right) \end{array}\right. \end{equation} となります.曲率\(\textcolor{#0070C0}{\phi\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)が分かったので,後は\(x\)で積分して,たわみ角\(\textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\),たわみ\(\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)を順に求めます. \begin{eqnarray} \begin{array}{l} \textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}= \left\{\begin{array}{l} \frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^2+\textcolor{#0070C0}{a_1} \\ -\frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^2+\frac{1}{2}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L}{EI}x+\textcolor{#0070C0}{a_2} \end{array}\right. & \begin{array}{l} \left(0 \leq x \leq \frac{L}{2} \right) \\ \left(\frac{L}{2} \leq x \leq L \right) \end{array} \\ \textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}= \left\{\begin{array}{l} \frac{1}{12}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^3+\textcolor{#0070C0}{a_1} x+\textcolor{#0070C0}{a_3} \\ -\frac{1}{12}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^3+\frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L}{EI}x^2+\textcolor{#0070C0}{a_2} x+\textcolor{#0070C0}{a_4}\end{array}\right. & \begin{array}{l} \left(0 \leq x \leq \frac{L}{2} \right) \\ \left(\frac{L}{2} \leq x \leq L \right) \end{array} \end{array} \end{eqnarray} 但し,未知の積分定数\(\textcolor{#0070C0}{a_1}\),\(\textcolor{#0070C0}{a_2}\),\(\textcolor{#0070C0}{a_3}\),\(\textcolor{#0070C0}{a_4}\)が出現します.この積分定数は,境界条件(boundary condition)によって定まります.今回の境界条件は,「ピン支点においてたわみはゼロ」として, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{0}\right)}=\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{L}\right)}=0 \end{equation} なので,これを式(43)に代入すると \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{0}\right)} &=& \textcolor{#0070C0}{a_3} = 0 \\ \textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{L}\right)} &=& \frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^3}{6EI}+\textcolor{#0070C0}{a_2} L+\textcolor{#0070C0}{a_4}=0 \end{array} \right. \end{eqnarray} を得ます.また,\(x=\frac{L}{2}\)において,関数\(\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)は滑らかに接続されるので \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{\frac{L}{2}}\right)}&=& \frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}\frac{L^2}{4}+\textcolor{#0070C0}{a_1} = -\frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}\frac{L^2}{4}+\frac{1}{2}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L}{EI}\frac{L}{2}+\textcolor{#0070C0}{a_2} \\ \textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{\frac{L}{2}}\right)}&=& \frac{1}{12}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}\frac{L^3}{8}+\textcolor{#0070C0}{a_1} \frac{L}{2}+\textcolor{#0070C0}{a_3} = -\frac{1}{12}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}\frac{L^3}{8}+\frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L}{EI}\frac{L^2}{4}+\textcolor{#0070C0}{a_2}\frac{L}{2}+\textcolor{#0070C0}{a_4} \end{array} \right. \end{eqnarray} も条件式となります.境界条件:式(45)・(46)を合わせて,\(\textcolor{#0070C0}{a_1}\),\(\textcolor{#0070C0}{a_2}\),\(\textcolor{#0070C0}{a_3}\),\(\textcolor{#0070C0}{a_4}\)に関する連立方程式を作ると, \begin{equation} \left\{ \begin{array}{l} \textcolor{#0070C0}{a_3}=0 \\ L\textcolor{#0070C0}{a_2}+\textcolor{#0070C0}{a_4}=-\frac{1}{6}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^3}{EI} \\ \textcolor{#0070C0}{a_1}-\textcolor{#0070C0}{a_2}=-\frac{1}{8}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI} \\ \frac{L}{2}\textcolor{#0070C0}{a_1}-\frac{L}{2}\textcolor{#0070C0}{a_2}+\textcolor{#0070C0}{a_3}-\textcolor{#0070C0}{a_4} = \frac{1}{24}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^3}{EI} \end{array}\right. \end{equation} となり,これを解くと, \begin{equation} \begin{array}{llll} \textcolor{#0070C0}{a_1}=-\frac{1}{16}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI}, & \textcolor{#0070C0}{a_2}= \frac{3}{16}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI}, & \textcolor{#0070C0}{a_3}= 0, & \textcolor{#0070C0}{a_4}=-\frac{17}{48}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI} & \end{array} \end{equation} を得ます.つまり, \begin{eqnarray} \begin{array}{l} \textcolor{#0070C0}{\theta\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}= \left\{\begin{array}{l} \frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^2-\frac{1}{16}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI} \\ -\frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^2+\frac{1}{2}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L}{EI}x+\frac{3}{16}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI} \end{array}\right. & \begin{array}{l} \left(0 \leq x \leq \frac{L}{2} \right) \\ \left(\frac{L}{2} \leq x \leq L \right) \end{array} \\ \textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}= \left\{\begin{array}{l} \frac{1}{12}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^3-\frac{1}{16}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI} x \\ -\frac{1}{12}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}}{EI}x^3+\frac{1}{4}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L}{EI}x^2+\frac{3}{16}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^2}{EI} x-\frac{17}{48}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^3}{EI} \end{array}\right. & \begin{array}{l} \left(0 \leq x \leq \frac{L}{2} \right) \\ \left(\frac{L}{2} \leq x \leq L \right) \end{array} \end{array} \end{eqnarray} が変形量の式となります.例題3はたわみ\(\textcolor{#0070C0}{\delta_{\mathrm{C}}}=-\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{\frac{L}{2}}\right)}\)を求める問題でしたので, \begin{equation} \textcolor{#0070C0}{\delta_{\mathrm{C}}}=-\textcolor{#0070C0}{v\left(\textcolor{#000000}{\frac{L}{2}}\right)}=\frac{1}{48}\frac{\textcolor{#FF0000}{P}L^3}{EI} \end{equation} が答えとなります.なお,構造力学において,この問題と答え(式(50))は,暗記しておくことが基本ですので,まだ覚えてない人は覚えておきましょう.他に覚えておくべきパターンがいくつかありますので,次回以降に解説します.


  1. 弾性体は,連続体の一種なので,質点系との対比には連続体(continuum body)を持ってくるべきではないかとも思いました.しかし,連続体の解説を始めてしまうと,かなり範囲が広くなってしまいますので,今回は「弾性体」とし,学習進捗に合わせて随時,内容を拡大していけばよいかと考えるようになりました.
  2. この定義はNASAの「力とは物体に運動変化や応力を生じるエージェント」という定義を参考に,構造力学用に書き換えたものです.つまり,これは著者独自のものであって,必ずしも十分な汎用性・一般性を備えているとは言えません.また,基礎理論が連続体力学ですので,原子や分子の存在を想定していないことに注意が必要です.
  3. 多くの場合,反力とは垂直抗力で,壁とか床に接している点に生じます.
  4. 微分の定義式とは,関数\(\textcolor{#FF0000}{h\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}\)の導関数\(\dif{\textcolor{#FF0000}{h}}{x}\)が以下の式で表されることを指しています. \begin{equation} \dif{\textcolor{#FF0000}{h}}{x}=\lim_{\varDelta x \rightarrow 0}{\frac{\textcolor{#FF0000}{h\left(\textcolor{#000000}{x+\varDelta x}\right)}-\textcolor{#FF0000}{h\left(\textcolor{#000000}{x}\right)}}{\varDelta x}} \end{equation}