粒状体力学とは



[1] はじめに -粒状体とは-

「粒状体」とは、砂や石、あるいは各種粉体といった、固体粒子が集まった系をいいます。
あらゆる物質は、原子・分子からできています。従って、全て「粒子系」として取り扱うことが可能です。
この力学系は「統計力学」によって、かなり整理されています。
しかし、固体粒子の間には、接触を介して「摩擦力」が作用します。 摩擦力はよく知られた力ですが、これがあることによって、非線形性、エネルギー逸散など、集合体としての振る舞いが著しく複雑になります(→
また、一般に粒状体力学が対象とする系は、粒子が「高濃度」に存在する系です。 このような系では、一般的に統計力学的な扱いが難しくなります。

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粒子がぎっしりつまった系(赤線は接触点力)



[2] 我々の身の回りの粒状体

以下は、研究対象となりうる粒状体の例です。
・小麦粉、塩などの食品や飼料
・医薬品(固形錠剤)
・洗剤、携帯カイロなどの日用品
・石炭、鉱石、ウランなどの固体資源
・セラミックス原料、ナノ粒子などの粉体材料
・岩、砂、粘土などの地盤材料
・NOX, SOX,花粉などの環境影響微粒子、ゴミ焼却灰の再利用
・赤血球、白血球などの生体要素

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土石流現場で見られる巨石


[3] 粒状体の不思議:固体?流体?

「粒状体」の不思議な性質として、ある時には固体、ある時には流体として振る舞う、ということが挙げられます。様々な固体材料を産業で取り扱うとき、粉体(粒状体)の状態にしておくと、パイプを通して輸送できたり、化学反応を早めたり、様々な効果があります。このようなプロセスでは、粉体の流動性を利用しており、粉体は「流体」のように振る舞っています。
一方、そのような粉体材料をサイロなどに貯蔵しておくとき、出口で閉塞が起こってしまうことがあります。これは、粉体材料が「固体」のように振る舞っている例です。
我々は地面の上で生活していますが、通常、地盤材料は固体のように振る舞っています。しかし、条件によっては、液状化が発生したり、土石流が発生したりして、流体のように振る舞います。
材料を「固体」「流体」と分ける従来のマクロ力学モデルでは、このような変化を自然に扱うことはできません。

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流れる粒子群


[4] これまでの研究テーマ

これまでに次のような研究を行っています(進行中のものを含む。かっこ内は担当学生または卒業生)。

(a)ツール開発研究
(a-1) SPring-8マイクロX線CTによる粒状体の3次元変形挙動の可視化
(a-2) LAT(Laser-Aided Tomography)による高濃度固液混相系の可視化手法の開発
(a-3) イメージベース個別要素法(DEM, 固体粒子の直接計算法)の開発
(a-4) SPH+DEMによる固液混相系の数値解析手法の開発(竿本君)
(a-5) 粒状体解析のための有限変形ひずみ勾配FEMの開発

(b)粒状体挙動に関する基礎研究
(b-1) 粒子サイズ効果に関する研究
(b-2) 粒子形状が集合体としての力学特性に及ぼす影響の検討
(b-3) 良配合粒状材料の力学挙動に関する検討(相崎君、戸田君)
(b-4) 高濃度固体粒子系のマイクロメカニックスモデル

(c)応用研究
(c-1) ロックフィルダムの地震時安定性の検討
(c-2) 地盤の液状化に伴う流動と基礎杭に作用する流体力に関する微視力学的検討(岩田君、坪川君、Mounirさん、河村君)
(c-3) 土石流のメカニズムと、対策工に作用する力の検討(佐藤君)
(c-4) 地盤内の汚染物質拡散モデルに関する研究(三田君)
(c-5) 地震表層断層の進展の解析
(c-6) 落石シミュレーション
(c-7) N値設計体系の再構築


[5] 今後の研究テーマ例

以下は、今後新たに発展させたいと思っている研究テーマ例です。
工シス学生へ:興味のある人は、気軽に話を聞きに来て下さい。

・つくば市の詳細地盤マップの作成と地震動シミュレーション
・液滴中のデトネーション波の伝播シミュレーション
・フレッシュコンクリートの流動に関する研究
・月面探査車の走行性、防塵性についての数値解析的検討
・建設ロボットの砕石すくい取り動作計画に関する検討
・メタンハイドレード採掘プロセスの検討
・粉体プロセスにおける化学反応シミュレーション