暗譜

 私は暗譜が苦手です.ていうか暗譜で弾くことはほとんどありません.実は,これは一種のトラウマで,小さい頃,いわゆるピアノの発表会であまり弾きたくない曲(とあるベートーヴェンのソナタ)を弾かされたときに,途中で忘れて止まってしまって,それまでは普通の人?と同じように当然のように暗譜で弾いていたのですが,それ以降,怖くて暗譜で弾けなくなってしまいました.

 暗譜は多分クララ・ヴィーク(クララ・シューマン,つまりシューマンの奥さんのこと.私は夫婦別姓論者なのであえて旧姓で書いている(^^;)が始めたものだと思うのですが,だとすると,それ以前のバッハ,モーツァルト,ベートーヴェンなどの時代は暗譜という習慣はなかったということになります.全くクララ・ヴィークも余計なことを始めてくれたものです.実際,彼女自身も暗譜に苦しんでいたという話をきいたことがあります.

 私もコンクールなるものを受けたことがあるのですが,そのコンクールは審査員のコメントがもらえるのですが,演奏はとてもよかったけど,とにかく暗譜で弾いてくださいというようなことをほとんど審査員の方が書かれていて(コンクールの要項では暗譜でなくてもいいと書いてあったのに),とても閉口した思い出があります.

 実は,暗譜はピアノソロに特有のもので,他の楽器は譜面を見ながら演奏することは普通によく行われています.ピアノも室内楽など合わせる場合は譜面を見て演奏されます.ですから,なぜ「ピアノソロ」だけ暗譜が半ば「義務づけられている」のかあまり根拠が見当たりません.管とか弦とか音の数はピアノより圧倒的に少ないわけですから,必要性から行くと全く逆のような気すらします.

 暗譜するメリットって何ですかね.特に思い当たりません.よく暗譜するほど練習しないとだめだとか言う人もいますが,それなら別に「暗譜するほど」練習して譜面を見て弾けばいいだけの話です.まあ,あえて言えば暗譜で弾けば「格好いい」ってことですかね(^^;.私は時々,例えば,スキーの宿とか,どこかバーのようなところ飲んでいるとき,そこにたまたまピアノが置いてあって,ちょっと弾いてみて,とか言われるのですが,暗譜していてぱっと弾ければ格好いい(^^;のですが,そうではないので弾く曲がかなり限られてしまいます.実際,そういう時は,ハチャトゥリアンのトッカータという,グラナドスの演奏会用アレグロ,バルトークのルーマニア民俗舞曲とともに近現代もの三大安直とT大ピアノの会で言われていたものの1つで急場を凌いでいます(^^;.

 更にたちが悪い?のは,ちゃんとしたピアノじゃなくてキーボードみたいな鍵盤の数が全然少ない電子ピアノみたいのでいきなり弾いてくれ,という言われる場合ですね.去年の筑波大バドミントン部の新歓でそういう状況になって,仕方なくその場は,得意?の一発芸で凌ぎました(^^;.大分昔,まだ学生の頃ですけど,研究室で飲んでるときに秋山先生(現,日大)の研究室で,秋山先生が研究室に練習用(^^;に置いておられたそういう鍵盤の数が少ない電子ピアノでちょっとした演奏会?みたいのが始まってしまって,近現代ものが専門の私は弾ける曲がほとんどなくて困ってしまった憶えがあります.前述のハチャトゥリアンのトッカータは88鍵ある鍵盤の最高音から最低音までほぼフルに使います.対照的に私と同じT大ピアノの会にいた神田研のK林はちゃんとバッハの平均律を弾いて,とても悔しい?思いをしました.そういう時用に,例えば,バッハなどの中音域のみで弾けるような曲を何か準備しておかないといけないですかね?めんどくせー(^^;.

 ただ暗譜が格好いいかどうかということですが,先日,同じ研究科のM田先生と暑気払い(暑気払いだからもう大分前か(^^;)で話したとき,彼は,譜面を見ながら弾くのと暗譜で弾くのとだったら,譜面見ながら弾く方が格好いい,だって,譜面見ながら弾けるってことは鍵盤を見ないで弾けるってことだからと言っていて,なるほどそういう風に見る人もいるのか,と思いました.みんなそう思ってくれればいいんですがねー.でも常に譜面を携帯するわけにもいきませんしね.

 後は,暗譜のメリットとしてはグランドピアノの場合,暗譜していれば譜面台をはずせるので音がよく聞こえる,ということでしょうか.実際,これはかなり違いますね.でも譜面台をはずして譜面をぴらっと直に置けば済むことです.

 まあ私はプロの演奏家(でもプロって何ですかね?別にライセンスがあるわけじゃないし,上手い下手でプロとかアマが決まるわけでもないし)ではないので,譜面を見ながら弾けばいいというだけの話でしょうか.実際,プロでもリヒテルのように堂々と(^^;見ながら弾いている人もいます.でも,曲によっては譜めくりするタイミングがほとんどない曲もあるのでそういうのは,一瞬で譜めくりするのもピアノのテクニックの1つということになりますね(譜めくりの練習も必要(^^;).中にはかなりアクロバティック(^^;になってしまうものもあります(今練習しているカプースチンのエチュードもそう).失敗すると止まったり,譜面が譜面台から落ちたりと大変なことになります(^^;.もちろん,本番は誰かにめくってもらえばいいのですが,ちゃんとめくってくれるかちょっと心配ですし(特に近現代ものは普通の人だといきなりは結構きびしい),横に人がずっと座っているのも気になりますし,第一,練習の時に同じ状況で練習できませんからね.ですから私の楽譜が「くしゃくしゃ(^^;」でも別にものすごく練習したわけではなく,激しい(^^;譜めくりの結果ですので,「こんなにくしゃくしゃになるまで練習するなんてすごいですねー」とか言わないでくださいね(^^;(そんなに全然練習してないので凹みます).

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