イタリア出張が何とか終わりました.IAEA(国際原子力機関)のプロジェクトの3年目のfinal meetingの招待講演者として呼ばれたもので,1時間のプレゼンテーション+30分のdiscussionでした.まあそのくらいならいつもならすぐに準備できそうなものですが,今回は出発前に体調を崩してなかなか進まず,とてもしんどい思いをしました.幸い体調は何日かで回復したのですが,体調を崩したときに精神的にも調子を落としていまい,体調が回復した後も,そちらの方がなかなか回復しませんでした.人間誰でも,いわゆる「調子」というものがありますが,大きく分けて体の調子(体調)と精神的な調子があると思います.体調を崩すと後者も崩れることが多いのでやはり体調管理は大切ですね.どちらかが何とかもっていれば,例えば,体調を崩しても精神的な調子がよければ,いわゆる根性(^^;で乗り切ることもできるでしょうし,逆なら人間追い込まれれば体さえ動かせばいいのならやる気を振り絞って何とかするものですが,精神的に低調だと頭も働かなくなるので頭脳労働はきびしいです.
精神的に調子を落とすとそもそもこんなことやっていて意味あるのだろうか?とか,いろんな「余計なこと」も考え始めます.私は一応「地震による構造物被害に伴う人命の損失を減らす」ことを目標として研究しているつもりなのですが,今やっていることが果たしてそれに繋がっているのだろうか?と考えると一抹の空しさは感じざるを得ません.それが期待できないとしても,やる気3要素でいうところの「内的熟達」,即ち,それそのものの面白さを感じられれば頑張ることはできますが,精神的に調子を落とすとそれがなかなか感じられなくなります.
そもそも地震防災は,数ある研究分野の中でかなり特殊なものではあるような気がします.いろんなそれそのものが面白そうな(面白いと思う人は面白いと思う)研究分野,例えば,宇宙や地球の生い立ちや自然現象を説明する理論の解明のような真理の探究,あるいは,これができると世の中がこんなに便利になるという,例えば,ロボットやIT技術のような,そんなに遠くない将来に希望がもてるものではありません.そんなに遠くない将来に希望がもてれば,いや,そんなに遠くない将来に希望がもてなくても,その分野のとてつもない奥深さを感じることができれば,少々辛いことがあっても頑張れるものです.地震防災は,地震災害といういつ来るかわからない,しかし来れば大きな「マイナス」のものをいかにそのマイナスの程度を減らせるかというもので,将来に希望があるといったものとは少し違います.面白ければいいといった類のものでもありません.似た分野に医者があると思いますが,患者の命を救ったときの喜び,そして感謝される,というようなことは地震防災ではあまり考えられません.
地震被害を減らすのが目的なら,学術的なことなんかやらずに,いかに既存不適格建物の耐震補強を促進させるか,という政治的行政的なことに力を入れるのが早道でしょう.しかし,果たしてそれが研究者のやるべきことか?少なくとも私がやるべきことかと考えると疑念を感じざるを得ません.それは研究者というよりは政治家,あるいは行政がやるべきことで,もし私が政治家になって世の中をよくしたいと思うのであれば,地震防災以外に変えたいことが山のようにあります.ですから「私は」やはり地震防災という枠組みの中で学術的なことをやるべきだと考えています.もちろん,それは私の場合の話であって,例えば,東大生研の目黒先生が既存不適格建物の耐震補強を促進させるために頑張っておられるのを見るとほんとに頭が下がります.まあ彼は研究者であって,かつ,政治家でもありますからね(^^;.ですから,「私は」そういう学術的なことをやるべきなのではないか,それが私の「役回り」なのではないか,という意味で,彼にはほんと頑張って欲しいです(ちょっと頑張りすぎなのでは,と少し心配ですが).
しかし,地震防災という枠組みの中でやるべき「学術的なこと」は急速になくなりつつあるような気がしています.もちろん,構造物が地震という不規則な外乱を受けて崩壊に至るという現象そのものを解明するにはまだまだやるべきことはありますが,なんとなくこういうものかな,というようなものは徐々に見えてきているような気がしています.
もちろん,戦後耐震工学が急速に発達してきた過程で何度か被害地震に遭遇しましたが,いわゆる東海地震のようなM8クラスの巨大地震はまだ経験していませんし,強震記録も取れていません.1995年兵庫県南部地震以降,強震観測網が整備されたので,そういう地震が起こればそういう記録が取れて,また超高層建物や大規模構造物などまだ大きな地震を経験していない構造物も沢山ありますから,何か不測の事態が起こって変な意味で研究のネタができるかもしれません.でも被害地震が来るのを待つ,というのも変な話です.知能をもった人間なのですから,そういう被害が起こる前に何とかすべきとはいつも私が言っていることです(例えば震度算定法).既存不適格建物の耐震補強を促進させるために「学術的な」観点から攻めるということも考えられます.しかしそういったことが一通り終わると一つの区切りが来るような気もします.それに,大地震が来るまで手をこまねいて待っているわけにも行きません.
もちろん未熟な私の錯覚なのでしょうが,精神的に低調だとそう思えてくるということです.「先が見えてしまう」?と夢がなくなるというか,どうしてもモチベーションが下がってしまうことは否定できません(この辺に関しては,フォロー記事をこちらに書いています).
というような,いろんな「余計なこと」をいろいろぐるぐる考えたりして,とても苦しい思いをしたわけです.あまりに苦しくて妻に電話していろいろ話をきいてもらって少し楽になりましたが,3時間も話し込んでしまい,ある意味逆に追い込まれもしました(^^;.更に,いろんな雑用もあったりして,結局出発前にはほとんど準備ができず,行きの飛行機の中でのパワポの作成になりました(それはいつものことか(^^;?).
いつもはエコノミーで全然平気なのですが,今回は追いつめられた状態だったせいか狭くてとても苦痛に感じました.招待講演なので旅費などは向こう(IAEA)もちなのですが,私を推薦したJNESのK田さんが,IAEAはけちだから(^^;エコノミーの旅費しか出ないとおっしゃっていたので,エコノミーのチケットを取ったのですが,振り込まれた額を見ると(振り込まれたのが出発直前というのもどうかと思いますが)なんとかビジネスで行ける額だったので,始めからわかっていればビジネスで行くべきでしたね.まあチケットの予約をしたときはこんな状況に追い込まれるとは思ってもいなかったですけど.ちなみに私を誘った?K田さんは10月からJNESからT芝に戻られたために彼は来られなくなってしまい,日本人は私1人でしたが,それはそれで気楽?でいいものでした(^^;.全然関係ないですけどCNNを見ていたら,IAEAがノーベル平和賞を取ったようですね.
ビジネスにするかエコノミーにするかということで,話は少し飛びますが,私は「余計なお金はいらない」という考えで,例えば,豪邸に住みたいとかいい車に乗りたいなどとは全く思いません(そう思えれば幸せになれるのに,とはよく思いますが,この辺のことは「欲と幸せの関係」で改めて書きたいと思います).食事だって何万円もする高級料理なんかより,1日中滑って腹ぺこ(^^;になって食べるスキー宿の飯の方が数倍うまいと思います.先日,世界で一番受けたい授業で竹中平蔵氏が「学生にきくと,みんなもう欲しいものなんかないって言うけど,じゃあ君はヨットは持っているのか?ときくと持ってないと答える.つまり身近なものをもっていることで物欲が満たされていて,手の届かない欲しいものを諦めている」というようなことを言っていましたが,私は全くそうは思いません.端的に言えば,私はヨットは欲しくないし,それは手が届かないからではありません.ほんとに欲しければ死にものぐるいで働いてでも借金してでも手に入れるものでしょう.そうしないところを見るとやっぱりそういう高額なものはほんとに欲しくないのだと思います.そしてそういう人は結構多いのではないのでしょうか?そういう意味で「お金を欲しがらせて頑張らせる」という経済システムはもう限界に来ているという気がします.
ただ,今回エコノミーの席に12時間半も座って,精神的に苦しい状態で仕事をしたとき,この苦痛が少しでもお金で解放されるのならお金を払いたいと思いました.妻の妹も大学で働いていて,彼女が「お金持ちになりたいですよ.だって,普通車よりグリーン車,エコノミーよりビジネス,ホテルだっていい部屋の方が明らかに快適じゃないですか.」とあっけらかんと言っていたのを思い出しました.そういう意味では,お金を払いたい,という状況を1つ発見(^^;できたので,それはそれでよかった?ことではありました.つまり,お金を払ってでも何とかしたい,という状況がどのくらいあるか,ということなのです.私は豪邸や高級車やヨットを高いお金を払ってでも手に入れたいとは思いません.そういうものは車好きなどの一部のマニアを除けば,いわゆるお金が余ってお金の使い道がない人のためのものでしょう.プロ野球選手がもともとみんな車好きなわけがありません.逆に言えば,心から豪邸に住みたい,いい車に乗りたいと思えて,それがモチベーションになるのなら,それはそれでとても幸せなことだし,羨ましいとも思います.話を元に戻します.
パワポは結局,飛行機の中でも完成せず(まあいい加減にやろうと思えばできるのでしょうけど,それができない損な?性格なので...)現地の夜,現地のホテルに着いてから少し眠って,起きてから何時間か作業してようやくなんとかできたという感じです.そしてすぐ講演(朝一の9時から)となりました.
講演は,1時間しゃべって30分discussionというものでしたが,まあ話す方はしゃべり始めれば何とかなりますが,30分のdiscussionはやっぱり長かった(^^;ですねー.しかもひっきりなしにどんどん質問が来て(まあそれはとても嬉しいことなんですが),中にはかなり英語が聴き取りにくい人もいたりしたのですが,まあこれも何とかなったという感じでしょうか.英語の聴き取りですが,アメリカ人はまあ聴き取れますし(中にはネイティブならでは?のいわゆる自分勝手な英語でまくしたてる人もいますが),ネイティブ以外はネイティブほど英語が得意ではないので,わかりやすい表現でしゃべることが多くこれも聴き取りやすいのですが,一番厄介なのがネイティブだけどアメリカ人やイギリス人でないとても訛がある英語をものすごいスピードでしゃべる人です(例えばインド系とか).そういうのはどうしたらいいんですかねー.
無事お仕事も終わり,そのまま日本にとんぼ返りというのも何なので,まあミラノ大聖堂くらいは見てくるか,という感じでちょっとミラノに寄ることにしていました.ここで書いているように,私は出不精で旅行というものをほとんどしないのですが,海外も含めて仕事ではいろんなところに出かけていて,そのついでにちょっと寄ってくるという感じです.実際,海外旅行というものはしたことがありません.つまり,海外に行くときはいつも仕事ということです.そして,観光名所を回るというよりは街並みを見るのが好きです.講演を行ったのは,研究施設があるIspraというところでミラノのMalpensa空港から北に1時間ほどです.仕事が終わった後一旦空港まで戻り,そこからやはり1時間ほどかけてミラノへ向かいます.実は空港からIspraに向かうときは,全然外国に来た気がしなかったというか,風景が日本ととてもよく似ていてびっくりしたのですが,ミラノに来るとやはり外国(^^;でした.あいにくの雨模様でしたが,ここからは写真付きでご紹介します(^^;.
空港からミラノに行くには高速バスが一番便利です.バスはミラノ中央駅↓の横 に着きます.











