5/31'05
地震予知

 今日は,東京で委員会で仕事だったのですが,仕事が終わるとそそくさとつくばに帰ってきてしまいました(帰りの高速バスの中でこの文章を書いています).いつもだいたいそう(^^;ですが,今回は,南関東で5月27日±4日にM7.2±0.5の地震が発生するという情報もちょっと気になっていました.東京にいるときに地震が起こると何が困るかというと,つくばに帰る交通がストップしてしまう可能性があることです.でも私もそうですが,首都圏直下で地震が起こったときに自分が死ぬかもしれない,と思っている人はどのくらいいるのでしょうか?

  阪神・淡路大震災から10年 地震災害の3つの特質と問題点や建築技術の5月号に書いているように,首都圏直下地震で1万人の方が亡くなったとしてもその確率は1/1000以下です(もちろん1万人ですめばの話ですが).しかしながら,経済損失は莫大で,日本の1年の国家予算以上が一瞬で吹っ飛ぶほどです.運良く構造物の倒壊に巻き込まれて命を落とすことは免れたとしても,建物やライフラインなどが甚大な被害を受ければ,その後の生活はできません.実際,昨年の新潟県中越地震で亡くなった方の多くは,地震後,不自由な生活の中で命を落とされてしまいました.つまり,完璧に地震予知ができても,倒壊する構造物は倒壊するわけですから,地震災害を抜本的に解決することにはならないことを肝に銘じておくべきでしょう.

 そうは言っても,何より重要な人命が地震によって失われる主な原因は,現在の耐震規定を満たしていない,いわゆる既存不適格建物の倒壊です.地震は自然災害というより人災というのも ここや建築技術の5月号に書いている通りです(地震の揺れそのもので人が死ぬことはありません.地震の揺れによって壊れるような耐震性の低い構造物が人命を奪うのです).そして残念ながら耐震性の低い既存不適格建物の耐震補強は遅々として進んでいないのが現状です.

 地震予知がもし1時間以下というオーダーで可能なら,事前に避難しておくなどすれば,建物など構造物の倒壊によって亡くなる人の数は圧倒的に減るでしょうが,現実には1時間以下というオーダーは厳しいでしょう.数日というオーダーでは避難しておく,などという行動を実際にとることは困難です.

 地震予知は構造物が倒壊して人命を奪うことを回避するのが目的ですから,構造物が倒壊するようなM8クラス,あるいは,直下のM7クラスを予知できなければあまり意味はありません.M6クラスの地震を予知できてもあまり意味はないし,それで予知できたと言えるのか?ということです.しかし, ここや建築技術の5月号に書いている通り,構造物が倒壊するような規模の地震は滅多に起きませんから,なかなか研究も進まないということになってしまいます.

 ですが,地震予知は社会的影響がとても大きいので,国が実際に警戒宣言を出すのは非常に難しいところがあります.警戒宣言を出して,例えば,新幹線を止めて何事も起こらなければ,莫大な経済損失が生じてしまい,責任問題,損害賠償問題にもなりかねません.

 そういう意味では,地震予知は民間の機関で,ある意味「無責任」にやってもらうのが現実的なように思います.頭の片隅に気にかけているかいないかで被害の大きさはかなり違ってくるでしょうし,例えば,今日の私のように(^^;,東京で仕事が終わったらそそくさと帰ってくる,というように,行動に移せる範囲で行動に移せるものもあります(無事,つくばに帰ってきました(^^).5月27日±4日なので,「期限」は明日までですね).M6クラスでも交通は一時的にでも止まる可能性があります.東京からつくばまで歩いて帰るのは大変です.そういう意味で,民間の地震予知研究の中で事前にちゃんと情報を公開しているものには,私は実はちょっと興味をもって着目しています.ただし,地震が起こった後,こういう予兆があったとか何とかいうのは問題外です.地震予知の最大の問題は,予知して地震が起きないという「空振り」であり,地震が起こった後になってこういう現象があった,という後付では使いものになりません.

 ですが,たとえ1時間以下というオーダーで地震予知できたとしても,倒壊する構造物は倒壊して,その後の生活はできなくなるわけですし,やはり,構造物,都市全体をしっかり地震に強いものにするのが最も有効な方策だと思います.我々は,起これば被害甚大でも確率は非常に低いリスクに対してとても鈍感なところがありますので,意識して心がける必要があります.

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