ポピュラーなショパンのピアノ曲 その2: プレリュード

 エチュードの次は,プレリュード(前奏曲)です.プレリュードにはOp.28のプレリュード集(全24曲)と単独のOp.45,遺作の全26曲あります.Op.28のプレリュードは,ショパンが敬愛してやまなかったバッハのプレリュードとフーガからなる平均律クラヴィア曲集の影響を受けたとされています.平均律は24の全ての調で書かれていますが,ショパンのプレリュード集Op.28も24の全ての調で書かれており,つまり,全部で24曲からなります.その中でどこかできいたことのあるようなポピュラーなものは,

・第4番ホ短調
・第6番ロ短調
・第7番イ長調
・第15番変ニ長調(雨だれ)
・第16番変ロ短調
・第20番ハ短調

でしょうか.特に第7番は,テレビを見たことがある人(テレビを見たことがない人もひょっとしたら(^^;いるかもしれないので)で聴いたことがない人はまずいないでしょう.太田胃散のCMの音楽としておそらくもう30年以上使われていると思います.イ長と胃腸が掛けられてるという噂があります(へぇー(^^;).第15番は「雨だれ」という愛称?で呼ばれています.第4番,第6番は,そんなに有名ではないかもしれませんが,お葬式などで時々聴きます.ショパンの葬儀にもこの曲が演奏されました.そういう感じの重々しい曲です.第20番もそんなに有名ではないですが,ラフマニノフ,ブゾーニなどがこの曲を主題としたバリエーション(変奏曲)を書いています.第7番もモンポウがバリエーションを書いています.第16番変ロ短調は,ピアノが上手い人が「自分はピアノが上手いんだ」ということをひけらかすためにてっとり早く弾かれる曲(^^;とよく言われています.ということは非常に演奏効果の高い曲です.

 このOp.28のプレリュードですが,私が思うに実験的な要素がかなり濃く,中にはショパンとは思えないほど前衛的な響きがするものもあります.そういう意味では数あるショパンの作品の中でも最先端?と言えるかもしれません.不協和音もふんだんに使われていて,様式的にもプレリュードという性格からかなり自由に書かれています.全ての調で書かれていますし,バラエティにも富んでいますので,是非この中からも「あなたのお気に入りの曲」を見つけてください.中にはとても弾きやすい曲もあります.小さい頃ピアノを習っていたがバイエルくらいで挫折した,という人にも弾けそうなものもありますよ.ここで紹介しているものも16番以外はとても弾きやすいです(ただ弾くだけなら,ですが(^^;).でも曲がりなりにも?ショパンが弾けたらちょっと格好良くないですか(^^;?

 譜面は,いろんな出版社から出ていて,版もいろいろです.有名なところではコルトー版,パデレフスキ版,原典版,ヘンレ版,最近注目されているものでは,ショパンコンクールで公認?となった,エキエル版などがありますが,そこそこ信頼が置けてなおかつお安くお手軽なのは,Dover社から出ているパデレフスキ版でしょう.エチュードとプレリュードが入っている巻は,全部でなんと$8.95です(私がもってるものは).もっとお手軽なものは,フリーのpdfファイルがネット上にあります.買ったとしてもショパンの主たる曲のほとんどをCD1枚に収録してわずかに$19.95です.

 演奏は,これもmidiでしたらここにいくつかあります(midiだけでなく,ピアニストの演奏を聴く必要があるのは,エチュードで書いたとおりです).演奏は,エチュードでポリーニをあげたので,ここではアルゲリッチをあげておきますか(特にお勧めというわけでもないが,他にぱっと思いつかないので(^^;).ポリーニのものもありますので,エチュードでポリーニの演奏が気に入った人はこれもポリーニでもいいでしょう.ただし,アルゲリッチのCD(私のはLP(^^;)には,Op.45と遺作も入っている完全版なので,そういう意味でもお勧めです.アルゲリッチはポリーニが優勝した次の1965年のショパンコンクールで優勝し,当時「女流ピアニスト」という枠を越えた初めての超一流の女性ピアニストと言われていました.でも,スペインものに関してはラローチャがいますし,考えてみればニコライエワもいて,彼女達の方が年上です.当時は,リリー・クラウスなどの女流ピアニストの多くは主としてモーツァルトを女性らしく(^^;?弾いていて,アルゲリッチがセンセーショナルなデビューをしたときには,そういう言われ方がよくされていました.

 確かにアルゲリッチの演奏は,パワフルかつ情熱的でほんとに男とか女とかそういう枠を全く感じさせないものです.ていうかむしろ男性的?私は当時は誰の演奏が好きかときかれたら,アルゲリッチとケンプと答えていたと思います.性格もその美貌(若い頃は(^^;ほんとにかわいくて綺麗で,私はアルゲリッチのポスターを随分長い間自室に貼っていました)とは対照的に竹を割ったような男らしい?性格と言われています.楽屋には脱ぎっぱなしのストッキングとかが無造作に放り出してあるらしい(^^;.ポリーニとアルゲリッチで思い出しましたが,ちょどそのころ吉田秀和氏の「世界のピアニスト」という本が世に出て,ポリーニとアルゲリッチの2人が別枠で大きく取り上げられていました.その本を中学の授業中に夢中になって読んでいたのを思い出します.吉田秀和氏の書く文章は,評論家という枠を越えて文学とも言えるもので,文学者だった父も一目置いていて全集が出るたびに1冊ずつ買ってもらっていました.今でも10巻くらいまで持っています.彼が紹介する演奏はどれも素晴らしいものなので,その中から興味があるものを聴いていく,という方法もありそうですね.エチュードで紹介したポリーニの演奏も取り上げられていたと思います.

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