やる気3要素と無気力(仮)

 やる気3要素とは,1.内的熟達,2.人とのつながり,3.報酬,の3つで,この3つは,1>2>3の順にやる気につながるとされ,3はむしろ逆効果のことがあるので注意が必要です.やる気3要素を考えると,やる気と幸不幸の相関性も何となく見えてきます.

 「人生や世の中などいろんなことについて考えること」は,主として私個人がいろんな人との議論やメールのやりとりなどを通して独自?に考えたことがほとんどですが,この「やる気3要素と無気力」は,

波多野誼余夫, 稲垣佳世子著「無気力の心理学―やりがいの条件」(中公新書)

にほぼ基づいています.ですから「やる気を出したい」人は,是非この本も買って読んでいただければと思います.どんな分野でもそうですが,その道の専門家が考えることは,やはりそうでない「素人」とは全然レベルが違います(^^;. 

 私がこの本を手にとった理由は,とにかく「無気力な自分を何とかしたい」と思ったからです.幸不幸は人それぞれと書きましたが,私にとっての幸福感は,「やる気がある状態」で何か(仕事でも遊びでも何でも)をする,ということと相関がありました.実際,何もする気にならず無気力に過ごしてしまった後は,何とも言えない嫌な気分になるものです.いや私は違う,という人も多いでしょうが,具体的にやる気3要素が何かを知ると,幸福感との相関性がわかっていただけるかもしれません.

 ちなみに方法論的には,やる気にならないときは,とにかく手をつけることだ(側座核が刺激されて徐々にやる気が出てくる)ということはわかっているのですが,どうしようもない無気力状態のときは,とにかく手をつけることすらできません.この辺の方法論的なことは,やる気3要素も含めてまた別途書きたいと思います.

 さて,本題のやる気3要素ですが,詳細は本を読んでいただくとして,ここでは簡単にその「やる気3要素」を私なりの解釈も含めて紹介します.やる気3要素とは,バドミントンなどいろんなところで断片的に既に書いていますが,

1.内的熟達
2.人とのつながり
3.報酬


の3つです.この3つは,1>2>3の順にやる気につながるとされ,3はむしろ逆効果のこともあります.3.報酬が一番なんじゃないの?と考える人も多いかもしれませんが,報酬は3つのうち一番下で,逆効果になることも多いです.つまり,「ご褒美」ばかりを目当てに頑張ろうとしても頑張れない,ということです.心当たりはありませんか(^^;?

1.内的熟達は少し説明が必要かもしれません.これはまあ簡単に言うと,やることそのものにおもしろさを見出す,ということです.どんなつまらなそうな退屈そうな仕事にもそれなりのおもしろさは見いだせるものですし,そういう姿勢が大事ということでしょう.実際,どんな仕事にも必ず奥行きがあり,おもしろさを見いだせるものです.給料が高い(報酬)なんてことより,自分が興味がもてる仕事をしたい,というのもそういうことです.

2.人とのつながりはとても重要です.どんなにつまらない(つまらなそうな)仕事でも誰かといっしょにやれば楽しくなることは大いにあります.実際,ある単純作業を1人ずつ個室でやらせた場合と,3人いっしょに1つのテーブルでやらせた場合は,作業効率が格段に違ったそうです.友達といっしょに勉強すると嫌いな勉強も何とかできた,という経験をおもちの方も多いと思います.「何を仕事にするか,ではなくて,誰と仕事をするかが重要」と言った人もいます.

3.報酬に説明は要らないでしょう.お金とか,出世するとか,ノーベル賞をもらうとか,オリンピックで金メダルを取るとか「ご褒美」は全て報酬です.そして,それはやる気をそぐことが多いので注意が必要です.

 この3つは例えばスポーツ選手で考えるとこうなります.スポーツ選手は報酬(例えば,試合に勝つ,オリンピックで金メダルを取る,プロ野球選手になって大金を稼ぐ)のために練習し,プレーしているとは考えられません.中にはそういう選手もいるかもしれませんが,それでは(やる気3要素的にはやる気が出ないので)一流にはなるのは難しいでしょうし(それでも飛び抜けた才能があればなれる?),ましてや人の心を惹きつけるようなプレーはできないでしょう.どうやったら打てるようになるか,どういうトレーニングをしたら速い球が投げられるようになるかなどを考えて考えて練習するのは,まさに内的熟達です.実際,イチローなどの一流の選手ほどそういう技術的なことを極めていこうとする姿勢がはっきり見て取れます.

 練習はとても辛いですが,1人ではとても耐えられないトレーニングも誰かといっしょに,例えば,部活やサークルの中でやれば何とか乗り越えることができます.練習の後,いっしょにご飯を食べたり飲みに行ったりするのも楽しみです.そして,試合で勝ったときの喜びを分かち合うのは何ものにも代え難い喜びでしょう.プロ選手なら大観衆の前でプレーできる喜びもあります.これらは全て人とのつながりと言えます.

 やる気3要素は,自分自身にあてはめて考えてもまさにそうだったような気がします.大学院時代にあれほどやる気になれたのは,いい論文を書いて何とかこの道で飯が食っていけるように(報酬)ということもあったとは思いますが,先生に認めてもらいたい(人との繋がり),研究という,未知のものを探求していくという今まで経験したことのなかったこと(内的熟達)にのめり込んだからでしょう.

 対照的に,もう10年以上経ちますが運良くこの道で職を得てからは,やる気を維持するのにとても苦しみました.「内的熟達」というのはその道を極める,ということなのですが,興味を維持し続けるのは至難の業であるのは事実です.やる気3要素的には「人とのつながり」で何とかやって来られた,と言えなくもありません.実際,私は研究者ですが,1人で研究室に籠もって研究しているようなことは1つもありません.研究室の学生(私は彼らを学生ではなく,いっしょに頑張って仕事をして行く研究員だと思っています)は言うまでもなく,学外のいろんな人といっしょに仕事をさせてもらっています.仕事も運良く地震防災という社会的な要素が強いものなので,微力かつ僭越ながらも世の中の役に少しはたてるのではないか,というのも心の支えになっています.いまだにバドミントンをやっているのも,バドミントンが強くなりたいという内的熟達やバドミントンを通していろんな人との繋がりができるからで,健康とかただ単に全日本で勝つとかいう「ご褒美」のためではありません.それはピアノでもスキーでもそうです.

 やる気3要素を考えると,やる気と幸不幸の相関性も何となく見えてきます.やる気が出せるようなやりたいことがあれば,それはもうそれだけで幸せなことです.人生やりたいこと探しかもしれません.最愛の人に巡り会えること,心の底から安らげる家族の存在,何でも話せて自分のことをわかってくれる友人,恋人がいること,自分が少しは社会の役に立っていると思えること(人との繋がり)は,何事にも代え難い幸福です.これらに比べれば,大金持ちになる,出世して偉くなる,ノーベル賞をもらう,オリンピックで金メダルを取る(報酬),なんてことは,ほんと色褪せた取るに足らないことに思えてきます.

 ここでまた(^^;ライブドアの堀江氏の登場ですが(というか彼だけでなく楽天の三木谷氏もソフトバンクの孫氏も),彼らも別にお金儲けして大金持ちになりたい,というだけではなく,そんなことより,いろんな人といっしょに手を組んで仕事をして社会を良くしていく(人とのつながり)ということが楽しいのではないのでしょうか?

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