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Mechanical Properties and Applications of FRCC


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[文献]
短繊維によるコンクリート補強(FRC)
コンクリートは引張に対しては脆性的(もろい)であり、延性材料である鉄筋と 併用することにより互いの長所を生かしてコンクリート構造物を構成している。 コンクリートの引張能力を期待することができれば、新しい構造形態の可能性がある。 従来から、鋼製の短繊維を使用して引張強度を期待したコンクリート(SFRC)が 使用されてきた。
FRCC
近年、ビニロン繊維やポリエチレン繊維を使用した、引張強度よりも引張靭性(伸び能力)を 期待した高性能繊維補強セメント系複合材料(SHCC、DFRCC)が開発されている。通常のコンクリートの ひび割れ歪が数百μであるのに対して、数%の伸び能力を期待しようとするものである。
FRCCの一軸引張試験
FRCCの伸び能力を検証しようとしても、現在ではその評価方法が確立されていない。 信頼できるデータを得ることができるよう、 「ダンベル型」供試体の作製、一軸引張実験を行う。
FRCCの曲げ試験
ダンベル型供試体の引張試験とあわせて、より供試体の作製が容易で、 加力を行いやすい角柱供試体を作製し、曲げ試験を行う。FRCCの破壊エネルギーの評価が可能である。
単繊維の引抜試験
FRCCの引張靱性は、マトリックスを架橋する繊維の架橋性能に支配される。繊維の架橋性能は、1本1本の 単繊維のマトリックスからの抜け出し特性によって決まる。抜け出し特性は、繊維とマトリックスの 付着性状、引抜力と繊維が角度を有することによって生じるスナビング効果に影響されると考えられる。 基本的な単繊維の抜け出し特性は、単繊維の引抜試験によって求めることができる。
引抜試験の結果
引抜試験の結果より、試験体厚さ(付着長)が大きいほど、また、角度が大きいほど引抜荷重が大きくなる様子がわかる。
架橋則の計算
単繊維の引抜性状をモデル化し、マトリックス中の繊維の引き抜き力を足し合わせることによって引張応力−ひび割れ幅関係(架橋則)を計算する。
(架橋則計算用プログラムはこちら

繊維配向の可視化
力の作用する向きに対して繊維が有効に配向していないと、想定する十分な引張靱性が得られない可能性がある。 FRCCの結合材(マトリックス)は、繊維の分散性を確保するために粘性が大きいので、マトリックスの流れ場によって 繊維の配向性が影響を受けると考えられる。セメントマトリックスを模した水ガラスを用いて、繊維配向の可視化を行う。
繊維配向の可視化
画像処理により、色のついたターゲット繊維の座標情報を取得し、繊維の配向角度の分布状況を検討する。 マトリックスの流れによる配向性の影響度を把握するとともに、流れを制御する方法を探し出す。


水ガラス可視化実験の動画
側面 ・  上面
FRCCの構造利用
FRCCに練り混ぜられる短繊維は、コンクリートのひび割れを架橋することにより、その能力を発揮する。 通常の鉄筋では補強効果が得られにくい箇所、例えば非常に大きいせん断応力が発生する境界梁(連層耐震壁を連結する梁) や柱梁接合部などへの適用が考えられる。
部分架構による実験
柱梁接合部のパネルゾーンには大きな複合応力が作用するが、高密度の配筋が困難な上に、現行指針では帯筋量を増やしてもパネルゾーンせん断強度や主筋付着強度を増大させることはできない。境界梁(上図)や柱梁接合部(下図)の部分架構を取り出した試験体を実際に作製し、加力実験を行って構造性能を確認するとともに、耐力や変形能の評価法を提案する。
FRCC梁部材のせん断実験
上図は通常のコンクリートを、下図はFRCCを用いた試験体である。内部の鉄筋の配筋や加力条件は両者でまったく同一である。数十年に一度程度の遭遇が考えられる大地震時の変形に相当する、部材角1/100の時のひび割れ状態を示している。実験の時にはひび割れの発生箇所の確認を容易にするため、ひび割れ箇所をペンでなぞってマーキングを行うが、2つの梁部材におけるひび割れの発生状況には大きな違いがある。部材角が同じであれば全体変形も同じであるので、ひび割れ発生本数の差がおおむねひび割れ1本あたりのひび割れ幅の違いとなって現れる。

梁試験体のひび割れ状況の動画
PVA20-60L(B) ・  PVA20-60L(A)