吊り天井脱落挙動解析技術の高精度化および脱落メカニズムの数値解析的検証
Improvement of Suspended Ceiling Collapse Simulation and Numvericdal Investigation on the Collapse Mechanism

Abstract


日本では,大規模な地震災害によって,体育館や空港などの大空間を有する施設の吊り天井が脱落・散乱する事例が現在までに多数報告されている.防災科学技術研究所は,耐震対策を施していない吊り天井(以下,未対策天井)が脱落する力学的なメカニズムの解明を目的として,実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を用いた吊り天井を有する体育館の振動台実験を実施した.実験結果から,地震動下における体育館吊り天井の脱落現象に関する力学的なメカニズムが推察された.さらに,実験的手法の代替として,磯部らは,有限要素法の一種で,高精度かつ低コストで梁部材の降伏や破断が計算できるASI-Gauss法を応用し,天井の脱落挙動を再現できる地震応答解析技術(以下,天井脱落挙動解析技術)を開発した.数値解析手法を用いれば,パラメータや解析モデルを変更するだけで様々なケースにおける吊り天井の脱落挙動を再現することができるため,パラメトリックな調査方法として極めて有効である.ところが,同解析技術は吊り天井の脱落挙動自体を再現することには成功したが,天井の脱落位置および規模に関する再現精度が十分でないという問題があった.その原因として,(i)天井を構成する部材同士を接合する金具(以下,接合金具)の1種であるハンガーの形状が正確に考慮されていなかったこと,(ii)野縁ジョイントと呼ばれる接合金具の脱落が正確に考慮されていなかったこと,(iii)クリップと呼ばれる接合金具が滑動することによって力が散逸する現象が考慮されていなかったことが考えられる.本研究では,天井脱落挙動解析技術における上記の問題点を改善することで,同解析技術の再現精度を改善する.その上で,未対策天井を対象としたE-ディフェンス実験の再現解析を実施し,体育館の構造躯体および吊り天井の応答,ならびに天井の脱落位置を実験結果と比較する.さらに,得られた解析結果を分析することで,吊り天井の脱落メカニズムを考察する.


In this study, accuracy of the ceiling collapse simulation was improved, and reproduction analysis of the shake-table test of a gymnasium with suspended ceilings was conducted. The eccentricity of hangers was introduced into the suspended ceiling model and detachment conditions of joint metal were improved. The numerical results showed that the response of the model and area of collapsed ceilings were in good agreement with the experimental results. In addition, additional forces exerted on the joint metals due to the buckling of suspended bolts and the vertical vibration of the ceilings caused by the eccentricity were investigated.