キーエレメント指標を用いた火災時の建物の崩壊危険性予測

Collapse Risk Prediction of Buildings on Fire Using Key Element Index

Abstract


 高層建築物が火災を引き起こす要因や火災規模は様々であり,その際に建物が崩壊する危険性を系統的に予測することは困難である.建物に大規模火災が発生した崩壊事例としては,9.11事件の際にニューヨーク世界貿易センタービル7号棟(WTC-7)が7時間程度燃え続けた後に完全崩壊してしまった例が挙げられる.NISTが9.11事件についてまとめた報告書では,火災によって建物のキーエレメントとなる重要な柱が損壊したことがWTC-7の主要な崩壊要因となった可能性が示唆された.一方,2005年にマドリードのWindsorビルで発生した大規模火災のように,ビルの大部分が長時間燃え続けたにも関わらず骨組が残存し,全体崩壊を免れた例も存在する.火災による建物の崩壊を防止するためには,火災範囲・発生階層と建物の構造パラメータとの関連性を調べ,その崩壊挙動への影響を知ることが重要である.先に磯部らは,火災範囲,部材の接合部強度,柱の軸力比,アウトリガートラスシステムの4つに注目し,火災範囲の非対称性が崩壊開始時間に大きく影響を与えることや,接合部の脆弱性が建物の完全崩壊を引き起こす要因の一つとなることを明らかにした.また,火災発生後に応力伝達経路が十分に確保されるような場合は,風外力に対する補強システムとして最上層に設置されたアウトリガートラスシステムが懸垂能力を発揮し,建物の余剰強度が増すことが定性的に示された.しかし,建物の構造パラメータや火災範囲から建物の崩壊規模を推定し,全体崩壊のような危険な崩壊形態を引き起こす火災条件を定量的に予測するまでには至っていない.そこで本研究では,建物の全体強度に対して個々の柱の寄与度を数値化した指標を用い,火災範囲内で耐力低下した柱の指標積算値と建物の崩壊規模との相関関係について調査し,火災時の崩壊危険性を予測することを試みた.


The purpose of this study is to predict the collapse risks of steel framed buildings on fire using a key element index. Some numerical analyses using the adaptively shifted integration (ASI) - Gauss technique were performed on a ten-story steel framed building model with various fire patterns. We investigated the relationship between the sum of key element index values and the sum of the heights of remains after various cases of fire-induced collapse. The numerical results indicated the presence of specific threshold of the sum of key element index values that relates to the initiation of a large scale collapse.