CTVビルの地震崩壊解析
Seismic Collapse Analysis of the CTV Building

Abstract


 2011年2月22日,ニュージーランドのクライストチャーチにおいてマグニチュード6.3の地震が発生した.この地震により,図-1に示すクライストチャーチ近郊のカンタベリーテレビ(CTV)ビルが,図-2のように北側のエレベーターシャフトのみを残して完全崩壊し,日本人の留学生を含む115人が犠牲となった.周囲の建物に目立った損傷は見られなかったにも関わらず, CTVビルのみが崩壊してしまった点に疑問が残る結果となった.
 本件についてニュージーランドの建築住宅庁が行った調査の結果,次のような崩壊過程が予想されると報告された.まず,CTVビルが地震動を受けたとき,建物全体が水平方向にねじれる振動が発生した.それに伴い東側中高層の柱が折れ,建物全体が東側に傾いた.このとき折れた柱にかかっていた荷重を残りの柱が支えきれず,根元から折れてしまった.最終的に全階層の梁・床は重なるように崩壊し,エレベーターシャフトのみが残されたとされている.なお,揺れを感知してからCTVビルが完全に崩壊するまでにかかった時間は,30秒にも満たなかったという.
 以上のように,CTVビルの崩壊現象については詳細にわたる調査がなされているが,崩壊原因については予測の域を出ていない.崩壊に影響を及ぼした可能性のある要素として,1つ目に強度設計の問題がある.耐震壁が偏って配置されていることや,柱部材の強度不足などによって,CTVビルが必要な耐震性能を保持していなかったと考えられている.2つ目は欠陥の未修復である.CTVビルは,この約半年前にあたる2010年9月に発生した地震によって,柱や耐震壁にひび割れが生じるなどのダメージを受けているにもかかわらず,修復はされないままになっていた.本研究では,CTVビルの構造設計に焦点を当て,崩壊原因を特定することを目的とする.再現性を高めるため,まずCTVビルの構造図面[1]を参考に解析モデルを作成した.解析にはASI-Gauss法にRC構成則を導入した地震崩壊解析コードを用いて崩壊現象を再現した.さらに,得られた解析結果と実際の崩壊形態を比較することで,崩壊要因について検討した.


In this study, we investigated the factor that caused the collapse of a reinforced concrete (RC) framed structure called the Canterbury Television (CTV) building by focusing on the actual structural design. The building totally collapsed with only the north-core wall remained standing, during the New Zealand earthquake which occurred on 22nd of February, 2011. To simulate the collapse phenomenon, a seismic collapse analysis code for RC framed structures developed using the ASI-Gauss technique is adopted. An analytical model of the CTV building is constructed based upon the structural drawing of the building. The numerical result showed a collapse behavior of a same feature with the investigation report, and it showed that the building had a problem with the structural design.


PDF file