柔軟リンク系の振動・動揺抑制

Vibration Control and Mechanical Sway Stabilization of Flexible Link System

Abstract


 近年,エネルギ消費削減を目的としてリンク機構の軽量化が求められる場合がある.その際に,部材剛性が低下し,リンク機構に曲げ振動が発生する問題がある.他方,作業効率を高めるため,動作の高速化も求められている.この際,機構全体が動揺するという問題がある.宇宙空間での利用においてもこの2 つの問題は無視できない.宇宙空間では空気減衰のない環境での運用になるため,リンクの曲げ振動が発生しやすい.また,拘束力が小さいために機構全体の動揺が発生しやすい.ここで,はりの振動現象を表した模式図を図1 に示す.リンクが外力により変形すると,その仕事がひずみエネルギとしてリンク内部に蓄積され,それが運動エネルギとへと変換される.このように,振動はひずみエネルギと運動エネルギの移り変わりが繰り返されることで起こる現象である.また,機構全体の動揺は入力トルクの反作用として回転軸回りおよび重心回りにモーメントが生じることで発生する.柔軟リンク系をモデル化し,その曲げ振動抑制を図る研究が多くなされている.一方,リンクの振動と共に系全体の動揺抑制を図るためには,系全体のダイナミクスおよび挙動を正確に把握することが必要となる.磯部らが開発した並列的逆動力学計算法(以後,並列的解法と記す)では,従来の動力学方程式ではダイナミクスを正確に導出することが困難な系に対しても,追従性の良い安定したフィードフォワード制御を実現している.さらに,本解法では有限要素法のアルゴリズムを用いているため,モデル内の任意の箇所に発生するモーメントを正確に算出できる.この特徴を利用することで,振動と同時に動揺の抑制も行えるシステムの実現に繋がると考えられる.そこで本研究では,リンク機構に発生する振動と動揺を同時に抑制するシステムを提案する.振動抑制は,柔軟リンク系内に発生するひずみエネルギを低減させることで行う.動揺抑制は,先行研究で開発されたトルクキャンセリングシステム(以後,TCS と記す)を用いる(4).本稿では,ひずみエネルギに着目した振動抑制法について示し,その有効性の評価を行うと共に,TCS で動揺を抑制するために必要なモーメントを並列的解法により求めた結果を示す.


In this paper, we propose a mean of vibration control and mechanical sway stabilization of flexible link systems. This system controls both the vibration generated in a link and the reaction moment generated by motion of an object. Since the vibration is caused by the transition between strain energy and kinetic energy, the mean of vibration control discussed in this paper aims to reduce the strain energy. The reaction moment is canceled by using a torque canceling system (TCS) which is developed in the previous studies. The effect of this vibration control system is shown by carrying out finite element analysis of a simple flexible link system, and a calculated result of the reaction moment generated at the location of a TCS.


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