ASI-Gauss法を用いたミニWTCモデルの火災崩落解析
Fire-Induced Collapse Analysis of Miniature WTC Models using ASI-Gauss Technique

Abstract


2001年、2機の航空機が世界貿易センタービル(WTC)に突入し、大規模な火災の末にビルが完全崩壊するという悲劇が起きた。FEMAやNISTの報告書によると、ビルの進行性崩壊を引き起こした主な要因は、ジェット燃料によって引火した火災であるとしている。しかし、これらの報告書では、ビルがコア構造までを含めて地上まで完全に崩壊してしまった直接的な要因については詳細な検討や考察がなされておらず、この件についてはまだ多くの疑問が残っているのが現状である。筆者の研究グループでは、WTCの崩壊要因を特定するべく、様々な観点から検証を行っている。具体的には、@)動的な外的要因の観点から航空機の衝突と崩壊現象との因果関係を調べるため、WTC全体モデルによる飛行機衝突解析、A)静的な外的要因の観点から大規模火災と崩壊現象との因果関係を調べるため、火災崩落解析を行っている。解析モデルは、@)では、飛行機の衝撃力がビル全体に及ぼす影響を調べるため、全体モデルを用いている。そのため、膨大な計算コストを要する。一方A)では、様々なパラメータスタディを実施する上で、省計算コストを実現する必要があるため、縮約したモデルを用いることとした。本稿では、A)の観点から、WTCビルを縮約した25層モデルに対し、火災発生時の構造物の挙動を解析した。モデルには、風に対する剛性を建物に付与することを目的とし、ダイアゴナルブレースによって上層部に構成された、アウトリガーシステムを配置した。解析には最小限のコストで計算可能なASI-Gauss法を用い、部材破断と接触を効率よく表現するためのアルゴリズムを導入した。また、温度上昇における部材の弾性係数・降伏応力低下曲線をNISTの報告書[2]から引用した。これらを用いてミニWTCモデルの火災崩落解析を行った。


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