進行性崩壊現象における部材接合強度の影響
Effect of Member Joint Strength in Progressive Collapse Phenomenon

Abstract


 本研究は9・11テロで崩落した世界貿易センタービル(WTC)の進行性崩壊現象に端を発しており、崩壊過程に影響すると考えられる要因を数値解析によって検証し、最終的に現象全体を解明することを趣旨としている。WTC の事例については、航空機燃料による大規模な火災がビルの倒壊を招いた主な要因として挙げられているが、本研究ではWTC の構造、特に部材接合部に着目し、その強度と進行性崩壊現象との因果関係について検証を重ねてきた。その背景には米国の高層建築物における部材接合強度の脆弱さという問題がある。すなわち、地震荷重を考慮しなくてよい環境にある米国東部では、柱や梁の接合部における曲げ耐力は部材のそれよりも小さくて済むが、飛行機の衝突といった強大な外力や崩壊による衝撃力に対しては弱点となる。この問題に対し本研究では、要素の曲率と軸ひずみの破断臨界値を操作することで部材接合強度を表現してきたが、これらだけでは部材の材料学的性質しか考慮できず、部材接合部が本来有する強度を十分に表現できたとは言い難い。そこで、上記の破断臨界値に加え、部材接合強度を表現するパラメータとして新たに「部材接合係数」を導入し、接合強度の影響を取り込んだ数値モデルの構築を行った。本稿では、10層骨組構造モデルの進行性崩壊解析に部材接合係数を取り入れた結果について報告する。


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