火災による耐力低下を考慮した骨組構造の崩落解析
Collapse Analysis of Framed Structures Considering Strength Reduction Caused By Fire

Abstract


 構造用の材料として広く利用される鋼材は溶解点が極めて高く,火災過熱を受けても部材の溶解は比較的少ないが,部材温度の上昇に伴い粘性が増加して比較的低い温度と低い応力度で部材の変形を誘発し,構造物に多大な影響を及ぼすことが分かっている.だが,その影響の与え方は様々で,例えば2005年にマドリッドのWindsorビルで起きた大火災においては,ビルが全焼したにも関わらず骨組だけは残存し全体崩壊には至らなかった.その一方で,2001年の米国同時多発テロの際に,世界貿易センタービル(WTC)群の一つであるWTC7のように火災によって進行性崩壊を起こしたケースもある.火災に起因する建物の崩壊を防ぐ上でも,これらの結果の違いを引き起こした構造的要因について調べる必要がある.
 そこで本研究では,建物の火災崩落現象を解析するためのシステムを開発した.火災という長時間の現象を動的に解析するには長い計算時間を要するため,最小限の計算コストで解析可能なASI-Gauss法を適用した.また,準静的領域と動的領域を両立して解くため,部材の急速な変形の有無によって時間増分を変化させる制御アルゴリズムを導入した.さらに,柱同士が接触する際には軸剛性のみを持つヒンジ要素を形成させ,実現象に即した崩壊挙動の再現を試みた.本稿では,部材破断,要素間接触および温度上昇における部材の耐力低下曲線を導入し,10層2スパン骨組構造の火災崩落解析を実施した.そして,火災が生じた階層や床範囲などの初期条件に対する崩壊モードの相違を調べた.


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