Abstract
リンク機構に目標軌道を与え,その実現に必要となる関節トルクを算出することを逆動力学計算という.
一般的な逆動力学計算法では,ニュートンオイラー法などによりリンク機構の動力学方程式を導き出し,
その式から直接的にトルクを算出する.しかし,動力学方程式は相対回転座標系に基づいて定式化され,
各変数が相互に依存し合うために,対象となる機構のダイナミクスが変化した場合には式の再導出が
必要となる.そこで,リンク機構のダイナミクスに依存しない統一的な逆動力学計算法の開発を目的とし,
有限要素法(FEM)を用いた並列的解法(PSS)が考案され,開・閉ループが連続的に発生する機構の
フィードフォワード制御においても有効であることが確認された.
他方,近年のロボットにはタスクを高速化し,かつ消費エネルギーを削減する目的で部材の軽量化が
求められている.しかし,軽量化に起因する部材剛性の低下により,部材に発生する曲げ振動が
無視できなくなるため,その振動を制御することが重要な問題となる.また,柔軟リンク系の複雑な動特性を
改善するためには,逆動力学計算によって算出される関節トルクを用いて動力学補償を与えることが有効となる.
そのため,フレキシブルアームの軌道制御や逆動力学計算などの研究[3]が行われている.しかし,従来の
動力学方程式が剛体リンク系を想定し,しかも相対回転座標系に基づいていることにより,その逆動力学計算過程は
煩雑なものとなっている.一方,並列的解法では,FEMによって弾性たわみを考慮した軌道計算アルゴリズムを
付加することで,柔軟リンク系に対しても適用可能となる.
本報告では,並列的解法により得られるフレキシブルマニピュレータのトルク曲線の妥当性を示すことを
目的として,解析および実験による検証を行った.