機構の強度的危険性を考慮したマニピュレータの動作計画
Motion Planning of Manipulators Considering Its Structural Risk

Abstract


 従来からロボットの軽量化は,動作の高速化,消費エネルギの軽減や安全性等の点から重要視されてきた.しかしその一方で,軽量化によって機構の強度が低下し,破損の可能性が高まるという問題が生じている.近年,研究が盛んな生活支援ロボットや福祉関連ロボットなどの人間と共存を目指すロボットは,人間に危害を加えないように軽く,しかも様々な作業が行える機構であることが望まれる.また,突然の外力等によって機構が破損しないような対策も求められる.このような様々な環境にさらされる可能性のあるロボットには,適切な強度設計がなされた上で,その動作段階で外力に対して安全な姿勢をとらせることが,機構の破損を回避する有効な手段の一つであると考えられる.これは普段,人間が作業の負担を軽減するために様々な姿勢をとることからも想像できる.
 他方,ロボットの姿勢決定や動作計画については,従来から様々な議論がなされており,人間の動作を模擬した動作計画に関する研究なども行われている.これらの研究では一般的にロボットの構成部材を剛体として扱うことが多く,また柔軟構造を取り入れたロボットの研究などにおいても,機構の強度的危険性を考慮した姿勢決定や動作計画はほとんど実施されていない.
 以上のような観点から,ロボット機構を構造工学的に捉え,機構の部材強度を考慮した姿勢決定・動作計画法が考案された.本手法は,有限要素法を用いた実時間内力分布解析により,断面力レベルでの部材降伏危険性と機構内に蓄積される全ひずみエネルギという,2種類の構造力学的パラメータを監視することで,機構にとって危険な姿勢を回避しようというものである.本報告では,以下のような組み合わせで動作計画を実施し,これらの2つの構造力学的パラメータが本動作計画法において果たす役割について考察する.
・断面力レベルで部材の降伏危険性を判定後,全ひずみエネルギを抑制する手法 (Scheme A) ・全ひずみエネルギのみを用い,その最小化を行う手法 (Scheme B) ・断面力レベルで部材の降伏危険性を判定後,その抑制を行う手法 (Scheme C) さらに,本アルゴリズムを導入したインターフェースを作成し,実機による模擬実験を行い,その有効性・実用性について検証した.


In this paper, a methodology for motion planning of manipulators considering its structural risk is discussed. In this algorithm, when the member yielding risk of a manipulator in motion becomes high, a safer attitude is searched to restrain its total strain energy, to avoid the structurally dangerous attitude. Risk for member yielding and total strain energy are calculated by using the Finite Element Method (FEM), and an attitude for restraining the total strain energy is searched by using Direct Search Method (DSM). Some numerical tests are carried out to examine the roles played by the two structural parameters in this algorithm. Furthermore, the motion-planning algorithm is implemented into an experimental system to verify its validity and practicability.


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