荷物を積載したパレットラックシステムの地震時挙動解析

Seismic Behavior Analysis of a Fully Loaded Pallet Rack System

Abstract


インターネット通販の急速な普及により貨物量が増加し,物流倉庫の需要が拡大している. 物流倉庫において, 荷物を保管するためにスチール製のラックが一般的に使用されている. 中でも,パレットラックシステムは荷物をパレットと呼ばれる荷役台の上にのせて保管される倉庫において最も一般的なラックである.他方,日本は世界有数の地震大国であり,これまでに多くの地震が発生し様々な被害を受けてきた. 日本の物流倉庫もその例外ではない. 建築基準法の改正により,倉庫自体が倒壊するといった被害は減少しているが,ラックシステムの崩壊や荷物の落下・破損などの問題は無くなっていない. 実際に日本倉庫協会の調査によると,熊本地震では,熊本県内の79.4%の倉庫でラックの崩壊や荷崩れなどによって荷物に被害が出ている. ラックの崩壊は内容物の破損のみならず,物流機能の停止や人的被害にも発展するため,地震対策を強化する必要がある.
倉庫での地震対策として,落下防止バーや荷滑り防止マットといったものから,制振装置といったものまで数多く存在する. これらの効果の検証方法として実際のラックを振動台に載せて加振実験をするものが主流である. しかし,地震波やラック構造,荷物の条件などを変更するたびに実験を行うと莫大なコストや時間を要するため,繰り返し実験を行うことは困難である. そのため,ラックやその上の荷物の地震時挙動を容易に検証可能とする数値解析手法の確立が期待されている.
フォークリフトが衝突した際のラックシステムの進行性崩壊解析では,ラックの部材密度を調整することで荷物を搭載している状況を再現していた. しかし,この手法では荷物の移動・衝突・落下などによる影響を考慮できないという問題があった. そこで本研究では,ASI-Gauss法にペナルティ法による接触理論を導入し,さらに荷物とパレットラックシステム間の相互作用を考慮した連成解析手法を開発した.本稿では,パレットラックシステムの地震時挙動の再現を試みた結果について示す.


Pallet rack systems used to store cargo in logistics warehouses can collapse during earthquakes, causing progressive collapse of the entire rack. In this study, a coupled analysis method was developed to calculate the contact force based on the penalty contact theory and to consider the action and reaction forces between the pallet rack system and the cargo. The results of the seismic behavior analysis of the pallet rack system, conducted using the ASI-Gauss code, showed that the natural period changed in varying conditions of the loading levels and weights of the cargoes. In the fully loaded condition, the fall of the cargoes was simulated as the seismic response increased.


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